“緑の人”Friedemann Friese氏が語るゲームデザイン
Friedemann Friese氏と言えば,「電力会社(Power Grid)」「ロビンソン漂流記(Friday)」「5本のキュウリ(Five Cucumbers)」「Faiyum(ファイユーム)」などを代表作に持つ,ドイツ出身の人気ボードゲームデザイナーだ。また,とくに緑色に強いこだわりを持っており,自身の作品に緑色を多用することでも知られている。
そんな氏の人気を裏付けるように,ゲームマーケット2024春の初日,27日に開催されたステージには,開始前から多くの観客が詰めかけていた。
トークは,ゲームデザイナーとしての氏の経歴が語られるところからスタートした。
氏は「1992年に会社を作りましたが,その前からずっとゲームデザインを続けてきました。デザインを始めてから10年経って,仕事のような感覚でできるようになりました」と言い,都合30年以上はボードゲームを作り続けていることを語った。
また,ゲーム制作を始めたきっかけは「(遊ぶ)ゲームが足りないことに気付いて,自分で作るようになりました」とのことである。
そんなFriedemann Friese氏の作品の中で,自身が最も気に入っているゲームを問われると,氏は「一番稼いでくれるのは『電力会社』なので,それを答えるべきですが(笑)」と前置きしつつ,一番遊んでいるのは「Finished!」と話していた。
なお「電力会社」は,初心者向けでもありオススメとのことなので,まだプレイしたことのない人は,この機会に挑戦しみてはいかがだろうか。
「電力会社」は,電力会社の経営マネジメントをテーマにした対戦型のボードゲームだ。発電所と燃料を入手して送電網を敷き,より多くの都市への電力供給を目指していく | 一人用ボードゲームの名作として知られる「ロビンソン漂流記」。プレイヤーはロビンソンが漂流した島の住人・フライデーとなり,ロビンソンが島を脱出できるよう,彼を鍛え上げていく |
「5本のキュウリ」はスカンジナビアの伝統ゲーム「アグルカ」を現代風にアレンジしたトリックテイキング。ただし最後のトリックに勝ってしまうと,勝利点ならぬ敗北点のキュウリを押しつけられてしまう | 「ファイユーム」は,エジプトの土地を開拓し,街として発展させていくボードゲーム。多彩な効果を持つカードを組み合わせてコンボを作り,計画的な都市開発を目指していく |
ここからは,イベントのタイトルどおり,ゲームデザインについての質問が続いた。
続いてゲームデザイナーをやっていて一番嬉しい瞬間を聞かれると,氏は「プロトタイプを楽しく遊んでもらえたとき」と回答。一方で,苦しいのは「ゲームバランスを調整しているとき」だが,「好きな仕事なので幸せな気持ちでやっている」とポジティブに捉えているとのことである。
観客からの質問に答えるコーナーでは,複数のタイトルを並行して開発することがあるか,という問いが投げかけられた。回答は「ケースバイケース」で,集中して一つのタイトルを作ることもあれば,行き詰まったときなどに別のタイトルに移ることもあるそうだ。
アイデアを形にできない人へのアドバイスがほしい,という観客の質問に,氏は少し考えてから次のように答えた。
Friedemann Friese氏:
まず自信を持つことです。例えば5つのアイデアがあったとしてもプロトタイプを作るまでに至るのはそのうち1つだけ。さらに実際にゲームとして発売されるのは,5つのプロトタイプのうち1つだけです。どのアイデアがプロトタイプにまで至り,そして完成に至るかは分からないので,自信を持って進めていくしかありません。
アイデアを形にできたなら,次は人とプレイしてみることが一番大事です。そのときの相手は友だちではなく,別のゲームデザイナーが良いでしょう。デザイナーであれば,問題点を指摘するためにプレイしてくれるからです。
イベント終盤,ゲームマーケットの感想を問われた氏は,とにかく出展ブースの数に驚かされたとのこと。また2500ほどあった自宅のゲームを,最近900まで減らしたというFriedemann Friese氏だが,日本から帰るときには50タイトルほど増えているだろうと話,会場の笑いを誘っていた。
そして最後に,自分の作ったゲームには愛着が湧くものだが,自分でなく他人であるプレイヤーが楽しめるゲームを作ることに集中すべきと,日本のボードゲームデザイナーへのアドバイスを送り,イベントを締めくくった。
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