私は100円ライター。火をつける道具でも,ワンコインで働く物書きでもない。ただの“100円で遊べるゲームが好きなライター”だ。

 資本主義のお尻から生み落とされた私は,ただただドケチにやせ細った悲しい化け物である。いやでも実際,100円でゲームをたくさん遊べるなら,それが一番いいに決まっている。誰しもコスパ(コスい人間にとってのパラダイスの意)に飢えているのが現代社会というもの。

 今日もまた,Steamやアプリストア,さらに100均やお菓子の裏紙など,(ほぼ)100円で遊べてしまうゲームたちを伝授しよう。


永遠に遊べるローグライトな航海シム



 まずはPCゲームのド定番プラットフォーム,Steamのタイトルから。こちらの「サンセット・ルート」は定価120円だが,セールだと90円で買えたのでよしとする。100円ライターの生き様はゆるい。

 本作は,シンプルながらもリプレイ性の高い航海シミュレーションだ。といっても船を操作したり,私掠船を追い払ったりはしない。プレイヤーは「貿易船の船長」として,ターンごとに限られた手番を消費し,船員を雇い,積み荷を買い,それを別の港に売ってお金を稼ぐ。

 操作もマウスクリックだけで済む,お手軽設計だ。

一番分かりやすい,ざっくりとしたゲーム案内

 リプレイ性を生み出しているのは“船員を雇う”という部分だ。船員は9人まで雇用でき,それぞれ「特定のキャラクターを強化」「貿易で運べる物質量を強化」などの固有能力を持っている。

 しかし,どのタイミングでどのキャラがくるかはランダムだ。しかも雇用したが最後,解雇するには手番を消費しなくてはならない。プレイ中は5ターンに一度,国に税金を納める必要があり,“ターン中に積み荷を売れずに利益を発生させられない”とそれだけで終わりに近づく

船員は3人の選択肢から1人を選ぶ。雇用自体に金額はかからない

10人以上配置することもできるが,貿易値(運べる品物の数)にマイナスがかかる


 税金額はかなりシビアで,5ターンかけてお金を稼いでも,ほぼすべてを持っていかれるなんてのはざらだ。もちろん,返せなければゲームオーバー(強制的な長期休暇)となるし,回避などできない。

 だからこそ,限られたターンで,船員を慎重に雇い,より稼ぐための最適なシナジーを追求していく。なかには特定条件で下船する者や,勝手に仲間を消すキャラもいるので,それらもうまく活用したい。

稼いだ額や条件によってエンディングが変化。エンディング収集がもう止まらない

 航海シムとは書いたが,実際の遊び心地は“デッキ構築ローグライト”に近い。だからこそリプレイ性が高く,120円なのにアホみたいに遊べてしまう。つまるところ,コスパの鬼みたいなゲームである。

 ちなみに,作者であるRenka氏の作品はいずれも安価で,陳腐な表現だが「全部おもしろい!」のでオススメだ。全作品を買ったとしても1000円くらいで済んでしまうだろうが,まずは100円でヨーソロー!


ダイソーの100均で,侮れぬ深い読み合いを



 近年「ダイソーの100均ゲームがすごい!」と言われているのだが,確かに侮れないおもしろさだったのが「セカンドベスト」だ。

 本作はざっくり言うと“2人用の変則的な5目並べ”である。プレイヤーは互いに色違いのコマを持ち,順番に盤面に配置していき,勝利条件となる形状を目指す。やることは「コマを置く」か「コマを隣接マス,もしくは正反対の位置に動かす」かの2点だ。う〜んシンプル。

盤面の円形マスに,丸いコマを縦に重ねていく

勝利条件は「同じマスに3つ,自分のコマを積み重ねる」か「隣接した4マスの一番上を自分のコマにする」のいずれか。上記の画像参照

 ここまでの説明だと,交互にコマを置くだけの五目並べでしかないが,プレイ中は作品名でもある行動“セカンド・ベスト(次善手)”を行使できる。各プレイヤーはゲーム中に1回だけ,相手の手番終了時に「セカンドベスト!」と宣言することで,相手に“待った”をかけられる

 宣言された側は,そのターン中に実行したコマ配置をやり直さなくてはならない。最善手であったであろう配置以外の形を厳守でだ。

 つまり,お互いの最善手をつぶし合いながら,最善手ではなく次善手を用いて勝つ。それがセカンドベストなのである。

ここに白を置けば勝ち! なーんて意気揚々と置いたらセカンドベストを宣言される

 プレイヤー同士の思考が煮詰まってくると,中盤戦の読み合いはさらに過熱する。潰されたときのことを考えて勝ち筋をふたつ用意しておくのはもちろん,あえて最善手ではない動かし方をブラフに,相手のセカンドベスト宣言を釣るなど,さまざまな駆け引きを狙えるようになる。

 双方の読みの深さが勝敗を分ける,シンプルながらも奥深い勝負。次善手らしく,ダイソーでのお買い物ついでに買うならこれだ。


人はダイスだけでも遊べるんです


 もしかしたら「ダイソーなんて近くにねえし,PCは昨日ぶっ壊れたんだが〜?」という人もいるだろう。PCの修理費用のことを考えると涙が出てくる。100円ライターの財布は湯葉のように極薄なのだ。

 そんな人にもおすすめなのが,「ダイス」だけで遊べるゲームである。ダイスだけならどこの100均にもあるし,なんなら100均以外でも買える。とりあえずカバンに忍ばせておくと,「おい貴様。今から予をパーティゲームで楽しませよ」と言われても,意外となんとかなるはずだ。

こちらはCan Doの購入物。下の器もCan Do。私は100均ライターでもある

 例えば,ダイスが1個あれば疑似ブラックジャック(振った出目を合計21に近づける遊び)ができる。2個あれば丁半,3個あればチンチロリンだってできる。ルールが単純だから参加のハードルも低いし,仲間内ならポケットに入れておくだけで3分間バトルに持ち込める。

 なかでもダイス5個を使う「ヨット(ヤッツィー)」は最高だ。こちらはダイスの出目で役を作り,得点を稼ぐ,サイコロ版ポーカーと言える。有名どころだと「世界のアソビ大全51」にも収録されている。


 参加人数は何人でも。用意するのはダイス5個に,記録用の紙とペン。なければスマホを駆使すればいいし,なんならサイコロ&メモ帳のアプリでもできる。体感が薄いので,できることなら物体推奨だが。

 やることは,自分の手番がきたら「ダイスを5個振る」「振り直すかを選ぶ」「最後に役を選び,表の点数を得る」だけだ。

 目指す役は以下の表のとおりで,“ダイスを振り終わったら表のいずれかの欄を埋める”。役の成立・未成立は問わず,必ず埋めなければならない。そこにジレンマが生じる。終了条件は「全参加者の表がすべて埋まったとき(13回振ったら)」で,最も高得点の者が勝利となる。

エクセル画像にて失礼。役の名称はいろいろあるので深く気にしないでいい

 駆け引きの特徴は,表に一度書き込んだ欄は以降,なにがあっても更新できないというところだ。たとえばダイスを振り,“1,2,3,3,3”で「スリーナンバーズ」の役を12点で確定させた直後,同じ役でより高得点の“4,5,6,6,6”(27点相当)を出しても,欄は書き換えられない。

 つまり,役を出せばいいってものじゃない。どれくらいの点数で,どの役を確定させるかがめちゃくちゃ重要となる。

 上記の場合,安定を目指すならそのままでもいい。上振れを目指すなら出目3の「3の個数×3点」を消化しておくなど,割り振り方はいろいろある。こうした「こんな出目で,この役を使っちゃっていいのか……?」といったヒリつきが参加者をむしばむのだ。

振り直しの判断もアツい。4はゾロ目だから保持して……みたいな

 ちなみに,フルハウス〜ヨットまでの上位役は,ゲーム中にまったく出ないこともままある。麻雀の役満みたいなものだ。そしてもし,フルハウス〜ヨット以外の役が埋まった状態で,役にならない出目を出したときは,ルールに従ってどこかの欄に0点と記入しなければならない。

 だからスリーナンバーズを先に安い手で埋めてしまったばかりに,4,5,6,6,6がどの役にも該当させられなくなり,高得点のはずだった出目がゼロへと還った日には,枕で涙を濡らすどころか部屋の水位が上がってドアを開けられなくなる。助けてラフメイカー。

「出目1〜6は埋まっちゃったなあ。でも出目こんなんだったなあ」という場合でも,どこかの欄に0点と記入。フルハウスを0点で埋め,以降フルハウスを出しても,一度刻んだ0点は覆らない。運はもちろんだが,先見と挑戦と後悔がうずまく

 自由度の高い出目1〜6と,自由枠の“チャンス”をどう生かすか。単純な点数勝負だけに,自分なりの戦略がカギを握る。
 結局はダイスの出目次第などと吐き捨てながらも,ヨットなんか出した日には,脳みそがブッ飛ぶほどのパーティナイトに変わる。

 ダイスさえあれば遊べてしまうゲームは,人数がどれだけ増えてもあまり関係ないことが多い。ヨットはとりあえず覚えておいて損がないゲームなので,なんとなく人が集まったけど遊ぶものがない,なんてときは100均で買っておいたダイスで一躍ヒーローになってしまおう。

ヨットの確率は,なんと1296分の1。快楽物質ドバドバ体験を目指そう

 私は100円ライター。火をつける道具でも,ワンコインで働く物書きでもない。ただの“100円で遊べるゲームが好きなライター”だ。

 今日もまた,100円で遊べるゲームを探しにゆく。

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