大井川鉄道(静岡県島田市)は14日、2025年1月下旬から食堂車を運行すると発表した。SL急行に使われる旧型客車の一部車両を改装し、静岡県産の豊かな食材を列車の中で楽しんでもらう。「ローカル鉄道の再生請負人」と言われる鳥塚亮社長が6月の就任以来、実現に意欲を示していたアイデアで、観光誘客の強化につなげる狙いだ。
食堂車の愛称は「Train Dining オハシ」。1946年製造の旧国鉄で使用された客車に特注テーブルを配置した。新金谷と川根温泉笹間渡間を往復するSL急行「かわね路号」の貸し切り車両として、3月ごろまで週末を中心に1日1往復する。同社によると、SLがけん引する食堂車は全国初という。
車内では3段重ねの弁当を提供。弁当や総菜店などを展開するグループ会社、天神屋(静岡市)が考案した和牛ハンバーグ、浜名湖産のうなぎ巻き、ごま豆腐などのメニューをそろえた。チョコレート入りアイスクリーム「SL黒アイス」の配布サービスもある。料金は1万6800円で、定員38人。同社のホームページで近く受け付けを始める。
14日に沿線市町や観光協会の関係者などを招いた試乗会を開催した。乗車した島田市の染谷絹代市長は「上質なメニューでとてもおいしい。大井川流域の景色を楽しみながら、多くの人に味わってほしい」と期待を語った。
鳥塚社長はいすみ鉄道(千葉県大多喜町)社長時にレストラン列車「伊勢海老特急」、えちごトキめき鉄道(新潟県上越市)社長時には観光列車「雪月花」の運行を企画した。大井川鉄道社長就任後は日本経済新聞のインタビューで「グルメ列車の運行を検討していく」と語っていた。
鳥塚社長は試乗会終了後、「冬の閑散期対策として企画したが、夏以降も新たなグルメ列車の運行を目指す。メニューが異なる複数のコースも用意したい」と話した。
大井川鉄道はSL「きかんしゃトーマス号」やトロッコ列車などを運行する観光鉄道。22年9月の台風被害により本線の一部区間が不通のままで、復旧のめどが立っていない。
(西村正巳)
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