国内レトロゲームの高騰が続いている。サブカルの聖地の東京・秋葉原の中古ゲーム販売店をのぞくと、1980~90年代に登場した一部のゲーム機や名作ソフトが定価の数倍に「爆上がり」している。投資目的の購入も指摘され、さながら骨董(こっとう)品のような存在になりつつある。何が起きているのか。(西田直晃)

値段が高騰しているゲームボーイカラーや「初代ポケモン」=4月30日、東京・秋葉原で

◆発売時の定価の5倍超えも

 「えっ? こんなに高くなってるんだ」  4月末の午後、東京都千代田区の「レトロげーむキャンプ秋葉原店」。息子と訪れた男性(42)が指さす先には、96年発売の人気ソフト「ポケットモンスター」の第1弾がある。保存状態によっては安い品も買えるが、発売時の定価3900円の5倍を超えていた。店内を見渡すと、80年代に発売された「ファミリーコンピュータ(ファミコン)」のソフトも数万円に達している。  「ここ数年、登場キャラクターの人気が高いゲームの高騰が特に著しい。外国人が買い求めている」と説明するのは、店長の田中祐博さん(43)。ポケモンをはじめ、こちらも名の知れた「スーパーマリオ」「ドラゴンボール」といった人気シリーズが注目を集めている。機器も値上がりしており、携帯機の「ゲームボーイカラー」は2万円を超える。

◆コロナ後、円安が需要後押し

 同店によると、コロナ禍を巡る政府の水際対策が緩和され、外国人観光客の個人旅行などが解禁された2022年10月以降、来店客の様相が一変したという。「月に数人程度だった外国人の購入客が、いきなり数十人にまで膨れ上がった。15年ほど前に営業を始めてから初めてのことだ」。昨年来の歴史的な円安進行もあり、日々の来客数はすでに日本人を上回った。  「中にはコレクターの外国人もおり、箱や説明書などの付属品がそろった完品を求める傾向が強い」

◆実況動画で人気再燃

 ゲームライターの渡辺卓也氏は「海外未発売のゲームを目当てにしている人もいる。一時代を築いたレトロゲームが、生まれた国である日本で買え、しかも円安の今、非常に魅力的に映っている。流通量の限られた希少なゲームソフトが高騰しやすかったが、数多く出荷された品でも、最近はネットオークションで全般的に値上がりの傾向にある」と解説する。  人気再燃の背景として、レトロゲームを巡る環境の変化もある。動画投稿サイトでは近年、ゲームを遊びながらトークを繰り広げる「実況」というジャンルが脚光を浴び、「取り上げられたゲームの人気に火が付いた例もある。今後も新たな付加価値が生み出されるかもしれない」(渡辺氏)という。中高年層や訪日外国人のさらなる需要の高まりを見越し、中古品販売・買い取り大手のブックオフとゲオは昨年、ファミコンソフトも楽しめるゲーム機を相次いで発売した。

◆海外オークション過熱、投資対象に

 海外の過熱ぶりはさらに激しい。米国のオークションサイトでは21年、1985年発売の未開封の「スーパーマリオブラザーズ」が史上最高額の約2億2000万円で落札された。渡辺氏は「レトロゲームは投資の対象になっている」と語り、「こうした状況に反応し、転売によって利ざやを稼ぐ『せどり』を個人で行う人も存在する。高騰の一助となっている可能性がある」と指摘する。  今後も高騰は続くのか。「前提として、レトロゲームの数は減ることはあれ、増えることはあり得ない」と渡辺氏。海外への流出量も大きい。「これまでに新機種でさまざまな復刻版が出てきたが、オリジナルに価値を見いだす人が多く、よほどのことがなければ流れは変わらないだろう」 

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