名古屋鉄道と子会社の名鉄ホテルホールディングス(HD)は11日、愛知県犬山市のホテルで産後ケアサービスを本格稼働する。24時間助産師などが食事などを支援するほか、近隣観光を兼ねて「産後うつ」を防ぐ。名鉄は若年層の取り込みが課題だ。ホテルを産後の新しい過ごし方として打ち出し、名鉄のホテルのファンになってもらう狙いだ。
産後ケアを提供するホテルは中部3県では初めてとみられる。名鉄犬山駅近くのグループホテル「ホテルミュースタイル犬山エクスペリエンス」で2025年5月末まで提供する予定だ。医療品卸のロイヤルポルテ(名古屋市)と連携する。
ホテルの118の客室のうち、6部屋を産後ケアサービスに充てる。4部屋が客室、残り2部屋は蒸気を使って下半身を温める「漢方蒸し」などのリラクゼーションを提供する部屋、そしてスタッフが常駐するベビールームだ。産後4カ月までの寝返りを打たない乳児を受け入れる。
客室は部屋番号のほかに、「海の部屋」「山の部屋」などイラストでも割り振られ、乳児の取り違えを防ぐ。セミダブルベッドを2台設置した「モデレートツイン」の部屋は間食、夜食を含む5食の食事付きで1泊6万7100円から。食事は栄養が考えられた食事が提供される。薬膳料理も用意し、産後の悩みに合わせて選べるようにする。
部屋には自身を振り返ることのできるノートを設置。滞在時の追加オプションでは、母親の骨盤ケアや乳児の記念撮影など、心身を休息させる機会を提供する。
宿泊前後のサポートも充実させる。宿泊前には体調やどのような滞在にしたいか、宿泊後はその後の母子の状況など、ビデオ会議サービスを使って面談を実施する。
11日の本格開業以降は1日1回の講座を開設する予定だ。抱っこ紐の使い方やおむつ、おしりふきの選び方を教える。母親たちが交流する機会となり、情報交換をする場を作る狙いがあるという。
11月末から試験的に提供したところ2泊の利用が多いものの、12泊宿泊した人や1カ月の宿泊を検討するケースもあったという。犬山城が近く、城下町を散策しリラックス出来たことや、久しぶりに温かいご飯が食べられてうれしいという利用者の声もある。
同サービスの事業責任者の小林春香氏は「とことん母親ファーストを掲げることが強みだ」と話す。病院であれば母親の母乳量や体重、子供の体調の指導があるが、ホテルでの滞在は休息が主となるため指導はせず、父母の負担にならないようにする。
ホテルにとってもメリットは大きい。以前から若年層を取り込みたいとの考えだったが、今回のサービス導入で母親の年代の利用者が増え、顧客が広がりつつある。ベビーカーでの利用もありホテル全体が和やかな雰囲気になったという。
今回の提携は、スタートアップや企業と提携し新事業を創出する「名鉄オープンイノベーションLab」の活動の一環だ。協業することで新たな基盤となる事業を模索する。
これまで名古屋市から一番近い宿泊型産後ケアサービスを提供しているのは京都市のホテルだったという。出産直後の母親の10人に1人が「産後うつ」を発症するとされているなか、愛知の観光を含めて気軽に利用してもらうサービスを目指す。
(竜田菜美子)
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