トンネル先端の地中に火薬を手作業で押し込む際の動きや感触をデジタルで再現した(2日、川崎市)

大林組は2日、山岳トンネル工事に無人で火薬を設置する技術を導入したと発表した。地中に手作業で押し込む際の動きや感触をデジタルで再現し、ロボットによる遠隔操縦を実現した。崩落の危険がある現場の有人作業を減らし、作業を効率化する。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援事業の一環で、慶応義塾大学と開発した。2024年7月から10月にかけ、長野県内で大林組が進めるトンネル工事現場に遠隔操縦のロボットを導入。トンネルの外にいる操縦者がロボットを動かし、直径5センチメートル、奥行き1メートル程度の横穴に火薬を送り込んだ。

遠隔操縦のロボット(写真上)をトンネルの外から操縦する(同下)

トンネル工事の先端部は崩落のリスクがあり、有人作業には危険が伴う。細くあけた穴の奥に火薬を押し込む際に繊細な力加減が求められることなどから、これまでロボットによる作業の代替が難しかった。

そこで慶大の触覚を伝達する技術「リアルハプティクス」を活用した。ロボットの腕の位置や動き、力の情報を再現することで、離れた場所から操作できるようにする。慶大システムデザイン工学科の野崎貴裕准教授は「穴に棒がぶつかったのか、あるいはかすっただけなのかが手に取るように分かる」と説明する。

川崎市内にある慶大の研究拠点に模擬トンネルをつくり、作業の自動化も実証した。火薬を送り込む管を穴に差し込む動作を記録して再現した。ロボットに取り付けたカメラでトンネル先端部の穴を検知する仕組みを組み合わせた。

模擬トンネルにロボットが自動で火薬を送り込む様子(2日、川崎市)

リニア中央新幹線の現場でも崩落による死傷事故が起こっている。大林組と慶大は自動運転の重機と連携させるなど無人化の範囲を広げ、安全性と効率を高めることをめざす。

慶大ハプティクス研究センターの大西公平特任教授は「自動で動く掘削重機が地中の埋設物を壊さずに工事をするといった活躍もできるようになる」と説明する。

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