海外建設協会(東京・中央)は28日、2024年4〜9月の海外建設受注額(速報値)が前年同期比14%減の9871億円だったと発表した。前年同期に北米で大型案件があった反動で受注額は4年ぶりに減ったが、海外現地法人が果たす役割は大きくなっている。

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加盟する52社の受注額を集計した。海外の現地法人の受注は20%減の7731億円、日本法人は22%増の2140億円だった。地域別では過半を占めるアジアが7%増の5817億円だった。全体の受注額は減ったが、前年同期に北米で1000億円規模の受注が2件あった反動があり、海外建設協会は「堅調な受注が継続している」とみる。

現地法人の存在感が増している。10年前は現地法人と日本法人の受注額がほぼ同水準だった。近年は現地法人の受注額が3倍以上に達する。河田浩樹専務理事は28日に開いた会見で「現地法人が地元に溶け込んで建設工事を進める動きが大きくなる」と語った。

例えば鹿島は米国法人が病院の新築工事を受注。大林組は23年度に買収した米国の水インフラ企業がオレゴン州で水道施設工事を獲得した。竹中工務店はスウェーデンのボルボ・カーからスロバキアの工場を受注している。

ゼネコン大手、海外工事のつまずき

ゼネコン各社が現地法人を強化する背景には、過去に海外で味わった苦い経験がある。大林組や鹿島などは05年にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイから無人鉄道システムの建設工事を受注した。しかし、度重なる設計変更や追加の工事に伴い事業費が膨らんだ。鹿島や大成建設なども06年にアルジェリア政府から高速道路工事を受注したが資材調達の難航や内紛の影響で、現地政府による工事費の支払い遅延が生じた。

結果、大林組は10年3月期の連結最終損益が533億円の赤字に。鹿島は連結営業損益が67億円の赤字となった。鹿島が参加する共同企業体(JV)への未払い金が一時1000億円規模に拡大。アルジェリア政府とは16年に和解し未払い金も解消済みだが、当時業績の下押しが続いた。

大きな損失を反省し、ゼネコン各社はリスク管理を強化した。大林組は約1兆円超のグループ純資産を裏付けとして、工事のトラブルに備えて金融機関が担保する限度枠である「履行保証枠」を北米で1兆円ほど用意。佐藤俊美副社長は「日系ゼネコンで同規模の保証枠を持つのは当社だけ」と胸を張る。

地政学リスクや商習慣の違いが課題

海外事業を拡大する経営方針は各社で共通するが、地政学的リスクや商習慣の違いが課題となる。解決には地場ネットワークの確立が重要だ。だが単発の工事受注では一時的な現地雇用にとどまり、人材を育てられなかった。そこで近年は進出する国や地域に腰を据えて人材を育てている。

鹿島は土木事業の受注を台湾や東南アジアなど実績が多い地域に絞り込む。米国では傘下の建設会社を不動産開発事業と連携させる。「グループの不動産会社の高い要求水準に応えることで、建設会社の品質や収益力も磨ける」(鹿島の越島啓介副社長)

大林組はタイで15年に、技術者など向けに体験型の研修施設を整備した。実物大の構造物を用意し、安全確保や品質管理を学んでもらう。22年に建設した超高層ビルでは日本の耐震技術を輸出。鋼管とコンクリートを組み合わせ、耐震性を高める技術を導入した。

竹中工務店は企業文化の浸透に力を注ぐ。現地採用した社員を選抜して日本に毎年呼び寄せ研修を開催。経営理念などを英訳して伝える。清水建設も11月初旬にシンガポールに本社を置く内装工事会社を買収した。大成建設はベトナムに現地法人を設立、開発から工事までの営業を強化する。

(橋本剛志)

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