三菱商事や三井物産などは22日、英BPなどと共同運営しているインドネシア最大の液化天然ガス(LNG)事業で、4カ所目のガス田を開発すると発表した。二酸化炭素(CO2)を再利用する設備も導入し、2028年以降に順次稼働を開始。LNGの主要産出国である米国は新規輸出を凍結し、ロシアは経済制裁が続くなか、エネルギー安全保障の確保に向け調達先の分散が進む。
西パプア州にあるLNG事業「タングー」の拡張で最終投資決定をした。LNG事業は天然ガスを海底や地下で採掘する工程と、ガスを運びやすいよう液化する工程に分かれ、今回は前者を拡張する。総投資額は70億ドル(約1兆800億円)となる。
同事業の権益比率を企業など別に見ると、英BPが40.2%。日本勢では石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が10.2%、三菱商事が9.9%、INPEXが7.8%、JX石油開発が7.5%、住友商事と双日が共同出資するエルエヌジージャパンが7.3%、三井物産が3.2%。中国企業も出資している。各社が出資比率に応じて、今回の拡張の投資額を分担する。日揮ホールディングスが一部設備の建設を受注した。
同事業で海底ガス田は現在3カ所あるが、採掘量が次第に減るため、4カ所目を開発する。すでにガス田を発見済みで、海底に掘削設備などを打ち込み、ガスを吸い上げる。タングーの液化設備は09年に稼働を始め、23年に拡張した。LNG生産能力は年間1140万トンで、今回のガス田拡張によって生産能力の維持につなげる。
天然ガスは液化する時にCO2などを除去するが、同事業では現在大気中に放出している。このCO2を既存のガス田に再注入し、内部の圧力を高めてガスを吸いやすくする。CO2排出量を大幅に減らせるという。
三菱商事は9月、マレーシアのLNG事業で数千億円を投じる権益拡大を決定し、25年にもカナダで共同事業を稼働させる計画。三井物産も7月にアラブ首長国連邦(UAE)で28年の稼働を計画するLNG事業で10%の権益取得を決めた。インドネシアには日本に近く、LNGを運びやすい利点がある。
英シェルは23年に約4億トンだったLNGの世界取引量が、40年に6億2500万〜6億8500万トンに増えると推計する。石炭よりCO2の排出量が少ないLNGは、脱炭素に向けた移行期に新興国も含めて需要が拡大する。
米国ではバイデン政権が今年1月に新規の輸出許可の審査を一時凍結し、中長期の増産に不透明感が漂う。米国では環境団体が化石燃料の輸出拡大を批判している。日本はLNGの確保に向け、輸出上位国以外の調達先を開拓することが急務になっている。
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