2030年ごろをメドに電子通貨の発行などでの実用化を目指す(クオンティニュアムの量子コンピューター)

三井物産は18日、少額出資する量子コンピューター開発の米クオンティニュアムと共同で、量子技術を使ったトークン(電子証票)の発行と利用の実験に成功したと発表した。従来型のデジタル通信によるトークンより安全性が高いのが特徴で、2030年ごろをメドに電子通貨の発行や株式・為替取引などでの実用化を見据える。

量子鍵配送(QKD)と呼ばれる技術を使いトークンを量子暗号化して発行者が10キロメートル離れた場所にいる利用者に発行できることを確認した。三井物産によると、商業利用可能な距離での実験に成功したのは世界で初めてという。

量子通信は光が微弱で通常の光ファイバーでは遠くまで送るのが難しく、類似の実験は研究室内など短い距離でのみ実施されてきた。そこで微弱な光を制御し、検出する技術に強みを持つNECの量子暗号通信装置を使い、長距離の送信を可能にした。

量子化したトークンは送信後に第三者が受信すると量子状態(0でもあり1でもある)を維持できず、0と1の状態になる特性がある。利用者が受け取るまでの不正アクセスの有無が把握できるため、トークンを即座に廃棄する対策がとれる。

量子トークンは量子コンピューター普及後にデジタル資産や取引を守る技術として注目されている。現在も暗号資産(仮想通貨)「ビットコイン」などは取引を暗号化しているが、高度な計算を可能にする量子コンピューターがその暗号を破る可能性が出てきているからだ。

スーパーコンピューターで数万年かかる計算を数分でこなすことから現在の暗号技術では対抗できない。三井物産とクオンティニュアムは今後、証券取引などより具体的な利用場面を想定した実験を実施していく。

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