このうち、イギリスの投資ファンド、パリサー・キャピタルは、大手私鉄の京成電鉄に対し、株主提案を出したと発表しました。

京成電鉄は東京ディズニーランドなどを運営するオリエンタルランドの株式を保有していますが、この株式の一部の売却を含む資本の配分計画を年内に公表するよう求めていて、株式の売却による資金を鉄道事業などへの投資に充てるべきだとしています。

また、国内のファンド、ストラテジックキャピタルは大阪の鉄鋼メーカー、淀川製鋼所に対して、株価の水準を示す指標の1つ、PBR=株価純資産倍率を1倍以上に引き上げるための計画の策定などを求める株主提案を出しました。

マネックスグループ傘下の投資助言会社、カタリスト投資顧問は大日本印刷への株主提案で、印刷やパッケージを中心とした成熟分野での収益性が低く、構造改革が必要だとして、みずからが指名する社外取締役の選任を求めています。

三菱UFJ信託銀行によりますと去年6月に株主総会を開いた企業のうち、株主提案が出された企業は90社と過去最多でした。

ことしも経営陣に積極的に提言を行うアクティビストと呼ばれる投資家などから株主提案の表明が相次ぐなか、企業がどう向き合うかが焦点になりそうです。

専門家 株主提案をどう見るか

株主総会の動向に詳しい大和総研の吉川英徳主任コンサルタントに、最近の株主提案をどう見ているか聞きました。

Q.ことしの株主総会でも株主提案は多く出されるのか。

A.ことしも去年と同じか、上回る水準での株主提案が想定される。
ガバナンス改革の意識の高まりや東証による『資本コストや株価を意識した経営』の要請によって日本企業が変わることへの期待感から、日本に参入するアクティビストが増えていることが背景にある。

Q.株主提案の中身に変化はありますか。

A.アクティビストなどからは、時間とコストをかけて会社の経営戦略やガバナンスを分析し、企業価値の向上に向けて洗練された提案が出されるケースがある。
一般の機関投資家も会社側と株主側の意見を踏まえて判断し、株主側の提案に賛成するところもでてきている。

Q.ことしの株主提案の注目テーマは。

A.東証の要請を背景に株価の水準を示す指標の1つ、PBR=株価純資産倍率に関連した提案のほか、去年8月に経済産業省が企業買収におけるガイドラインを公表したことを受けて、買収防衛策に関連した提案も注目される。

Q.近年の株主総会を見てどう感じますか。

A.企業経営を総括する場としての役割が強まってきている。
政策保有株式に対する目線が厳しくなり安定株主が少なくなるなかで、一般株主の判断次第では現経営陣の交代も視野に入ってくる状況だ。
今の経営方針の代替案として出される株主提案に対し、企業側は説明責任の観点からも向き合って株主からの支持を得る、そういう場に株主総会は変わってきている。

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