初取引で新茶の出来を確かめる静岡茶市場の関係者(12日午前、静岡市葵区)

茶どころの静岡県に新茶シーズンの訪れを告げる「新茶初取引」が12日、静岡茶市場(静岡市)で開かれた。史上最も早い初取引だった前年からさらに1日早まり、4月下旬に出荷のピークを迎える。平均単価は1キロ7万7637円で最高値を更新した。初取引では初めて一般の見学ツアーも実施した。

式典を終え午前7時ごろ、関係者の三本締めから初取引が始まると市場内では売り手と買い手がそろばんを片手に価格交渉をする姿があちこちで見られ、「パン、パン、パン」と取引成立を示す景気の良い手拍子が次々と響いた。前年に続いて手もみ茶の実演や物販、餅まきもあった。

10人限定で旅行会社が実施したツアーで、参加者は初取引の現場を見学し、生産者や買い付け業者らと交流したほか取引されたばかりの新茶を味わった。3時間程度で料金は1人あたり1万5000円だった。

急須で入れたお茶を飲む習慣が家庭で薄れ、消費者の認知度向上が課題となるなかで市場関係者らも協力した。静岡茶市場の内野泰秀社長は「山形や群馬、東京など県外からの参加者も多く手応えを感じた」と話す。ツアーは27日から5月6日までの10日間も実施し、茶の鑑定体験などを楽しめる。

静岡市で開かれた「新茶初取引」で最高値がつけられた茶=12日午前

最高価格は「やぶきた」という品種を手摘み・機械もみした「高嶺の香(たかねのはな)」。清水農業協同組合(静岡市)が出品し、111万1111円で和田長治商店(同)が買い付けた。同社の和田夏樹社長は「初取引が早いにもかかわらず変わらない質。新茶の芳醇(ほうじゅん)な香りを感じ良い出来だ」と評価した。

富士伊豆農協富士宮地区(静岡県富士宮市)が出品した希少な手もみ茶は富士宮富士山製茶合同会社(同)が108万円で買い付けた。

初取引の県産茶の取引量は50.8キロ。平均単価は前年の10倍超と大幅に上昇した。3月後半に気温が下がり生育が抑えられた上に、初取引が早く数量が少なかったことが要因。全ての茶が前年よりも高値で取引されたという。静岡茶市場の内野社長は香りなど品質の良さを強調し、「いち早く新茶を届け消費を喚起したい」と話した。

静岡地方気象台によると1月の平均気温は8.7度で平年より1.8度高く、2月も2.4度高く推移した。3月は0.4度高かったが気温が低い日も多かった。1〜3月の降水量は平年より多かった。4月下旬にかけて降水量が十分で気温が高いと茶葉が急速に伸びるといい、「収穫が集中すると生産が間に合わなくなる可能性もある」(内野社長)。

初取引には牧之原市産の和紅茶も1キロ出品され、前年より5000円高い2万5000円で取引された。「国外産よりも甘みがあるのが特徴」(担当者)で、内野社長は「和紅茶の適切な格付けの確立と流通の形成を進める」と意気込んだ。

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