セメントと生コンクリートの荷動きが低迷している。4〜9月(2024年度上半期)のセメントの国内販売量と生コン出荷量はともに7年連続の前年同期比マイナスとなった。資材高による工事計画の見直しや技術者不足に加え、24年度から本格的に始まった建設現場の長時間労働の規制に伴う工事の遅れがのしかかっている。年度の見通しも下振れの不安がある。
セメント協会(東京・中央)によると4〜9月の国内販売量は1633万766トンと前年同期比6.1%減だった。9月単月は前年同月比8.1%少ない280万9696トンだった。
セメントの用途は約7割が生コン向けだ。全国の生コンメーカーなどで組織する全国生コンクリート工業組合連合会(全生連、東京・中央)がまとめた4〜9月の出荷量は3298万9812立方メートルで前年同期比6.4%減った。9月単月は前年同月比6.8%減の579万2396立方メートルだった。
建設工事の現場は新型コロナウイルス禍以降、人件費を中心としたコスト高や人手確保の難しさを理由に計画の見直しが増加。生コン出荷の見合わせが相次ぎ、セメントの販売にも影響している。
さらに24年春からは建設現場の就労時間の制限が加わり、夜間や土日の工事作業を控える傾向が強まった。セメント協会流通委員会の福嶋達雄委員長(住友大阪セメント取締役常務執行役員)は「以前は土曜日にもあった生コンメーカーからの出荷要請は、今はほとんどない」と指摘。「工事現場の人手不足の急激な改善は見込みにくく、セメント販売の底入れ時期は見通しにくい」と話す。
セメント協会は24年度のセメントの国内需要は23年度をやや上回る3500万トンとしている。現在のペースでは3300万トンを下回る可能性もでてきた。
国土交通省によると、ゼネコン大手が受注する工事の手持ち月数は8月時点で17カ月分で、前年同月の水準をやや上回る。セメントや生コン業界では、建設需要はあるが販売や出荷が進まないとの不安が強まっている。全生連の斎藤昇一会長は「地方を中心とした公共工事向けなどで出荷を確保していきたい」と話している。
(杉山麻衣子)
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