医薬基盤・健康・栄養研究所や大阪国際がんセンター(大阪市)などの研究チームは、各病院でばらばらの電子カルテのデータの規格を自動で国際標準にそろえ、蓄積できるシステムを開発した。災害など有事の際の診療継続やデータを活用した創薬研究に役立つ。2024年内に大阪国際がんセンターで導入し、25年からは他の病院でも導入をめざす。
既に多くの病院で電子カルテが普及しているが、災害やサイバー攻撃などで使えなくなった場合にも診療を続けるために、データをバックアップしておく必要がある。ただ、日々発生するデータは膨大なため、そのままではシステムの保存容量が足りなくなる。そのため従来は必要な部分だけを医師が抜き出して手打ちで保存することが多く、作業に時間と手間がかかった。
今回、研究チームはがんの専門医に、カルテのうちがんの診療に重要な項目のみを抜き出してもらい、その項目のデータだけを日々自動で保存、更新するシステムを構築した。データ量が小さいため保存容量が足りなくなることはなく、医師は手作業から解放されて診療に時間を充てられる。がん以外の病気に対しても順次対応する予定だ。
電子カルテはNECや富士通など開発業者によって規格が違うが、FHIRと呼ぶ国際標準規格にそろえて保存する。国際標準規格で保存することで薬剤の効能や副作用などのデータを複数の病院から大規模に集められる。そのデータを人工知能(AI)で解析するなどの創薬研究もしやすくなるという。
24年11月から大阪国際がんセンターで試験運用を始め、その後、実運用に切り替える予定だ。「将来的には日本中の病院に導入し、医療のビッグデータ蓄積の中核になることをめざしたい」(医薬基盤研の担当者)
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