4月30日に発表された東京電力ホールディングスのことし3月期の決算は、グループ全体で
▽売り上げが6兆9183億円と、前の年度より14%減少しましたが
▽最終的な利益は、前の年度の1236億円の赤字から一転、2678億円の黒字を確保しました。

火力発電の燃料となるLNG=液化天然ガスや、石炭などの価格が下落し、調達にかかるコストが減ったことが利益を押し上げた形で、2年ぶりの黒字となりました。

一方、福島第一原子力発電所の事故に伴う賠償費用には、去年8月から福島第一原発にたまる処理水の放出を開始したことに伴うものも含め、1511億円を計上しました。

2025年3月期の業績見通しについては、新潟県にある柏崎刈羽原発の再稼働のめどが立っていないことから、「未定」としています。

小早川智明社長は、記者会見で「経営状況が抜本的に改善されたという状況ではない。柏崎刈羽原発の再稼働に注力するとともに、電力の安定供給とカーボンニュートラルを両立させるため、企業価値の創造に取り組む」と述べました。

一方、東京電力ホールディングスを含む、電力大手各社のことし3月期の決算は、4月30日までに出そろい、10社すべてで最終的な利益が黒字になりました。

業績改善も目標の利益水準には届かず

燃料価格が下落した影響で、今回、東京電力の業績は改善しましたが、目標とする利益水準には届いておらず、会社にとっては、いかに収益力を高めるかが引き続き課題となっています。

国は、福島第一原発の事故に伴う除染の費用を、東京電力の株式を売却して賄う方針で、東京電力には、株式の価値を高めるため収益力を向上することが求められています。

会社は、4500億円規模の最終利益を生み出すことを長期的な目標として掲げていますが、ロシアによるウクライナ侵攻以降、火力発電の燃料となるLNG=液化天然ガスや石炭の調達価格の動向が業績を大きく左右し、一昨年度の決算では、1200億円を超える最終赤字となりました。

こうした中で、収益の改善に向けて会社が重視しているのが、新潟県の柏崎刈羽原発の6号機と7号機の再稼働で、1基あたり1100億円の収支改善効果が見込めるとしています。

ただ、テロ対策上の重大な不備など不祥事が相次いだことに加え、ことし1月の能登半島地震で、住民の避難対策への懸念が強まるなど、今のところ再稼働の時期を見通せる状況には至っていません。

東京電力の事業計画の策定などを行っている「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」は、会社の経営改革について、去年12月に「ほかの企業との提携が実現できておらず、企業価値を向上させるための成長分野への投資なども不十分」などとする検証結果をまとめました。

政府と東京電力は、柏崎刈羽原発の再稼働の行方を見極めながら、新たな事業計画を検討する方針ですが、企業価値を向上させるための具体策をどのように示すかが引き続き課題となります。

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