脱炭素融資の新商品を開発した西日本シティ銀行の村上英之頭取(左から2番目)ら=30日、福岡市博多区

西日本シティ銀行は30日、取引先の二酸化炭素(CO2)の排出量測定や削減支援サービスを組み込んだインパクト融資商品を丸紅など3社で提供すると発表した。同行によると金融機関と総合商社が共同開発した脱炭素融資商品は国内初という。大手取引先に脱炭素を求められる中小企業などの需要を見込み、年間40〜50社の契約を目指す。

新商品名は「フォレストライク」で、5月1日から提供する。借入期間3年以上、1億円以上の融資を対象とする。資金使途は脱炭素関連に限らず、運転資金や設備投資など幅広く認める。融資を受ける際は支援サービスの対価として、金利と別に手数料を払う必要がある。

契約企業はまず自社の温暖化ガス排出量を測定する。自社の排出量であるスコープ1と電力使用などに伴うスコープ2について、CO2排出量の可視化を手掛けるe-dash(イーダッシュ、東京・千代田)のサービスで分析する。測定結果をもとにCO2削減目標を定め、西日本シティ銀や丸紅から3年間の支援を受けながら達成を目指す。

支援策として空調を省エネルギー性能が高い設備に切り替える、顧客が排出したCO2を丸紅が整備した森林で相殺する仕組み「カーボンオフセット」を使うなどを用意した。削減計画や目標は日本格付研究所(JCR)が環境省の指針に基づき評価する。

企業活動による社会影響などを評価して融資する既存の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」(PIF)と比べて、新商品では脱炭素の影響に絞って企業分析する。中小企業が利用しやすいよう、CO2の削減状況に応じて金利を優遇する「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」ほど厳格な目標は定めない。

西日本シティ銀と丸紅がかねて人材交流をしていたことで商品組成が実現した。西日本シティ銀の村上英之頭取(西日本フィナンシャルホールディングス社長)は30日の記者会見で「2030年度までにサステナブルファイナンスを2兆円実行する目標を掲げており、この商品は(達成の)一助になる」と話した。

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