住友大阪セメントは31日、海藻を育成する藻場造成システムを開発したと発表した。海藻の成長に必要な栄養素が溶け出す部材を取り入れるなどして従来製品よりも海藻の増殖能力を高めた。海藻の育成を通して二酸化炭素(CO2)の吸収源となる藻場の形成を後押しする。まずは地方自治体が手掛ける藻場創出事業などでの活用を目指す。
海藻などによって海に吸収された炭素は「ブルーカーボン」と呼ばれ、脱炭素の手段として注目されている。しかし海水温の上昇で活発化した植食性魚類が海藻を食べつくしてしまう「磯焼け」が各地で広がっている。藻場はエビなど海洋生物の住処にもなることから、生態系を守る観点でも藻場の形成が課題となっている。
同社が開発した藻場増殖礁はコンクリートの台の上に、ある程度育成した海藻を移植するプレートを設置。海藻がさらに育てば種となる胞子が周囲の岩場などに付着することで、藻場がさらに拡大する。新製品には鉄やリンなど海藻の成長に必要な栄養素がゆっくりと溶け出す部材をプレート周囲に取り付け増殖能力を高めた。
基礎となる台には低炭素コンクリートを採用した。製造過程で従来よりも80%ほどCO2を削減できる。プレートには海中の微生物によって分解される海洋生分解性プラスチックを活用し、海洋汚染の原因となる「マイクロプラスチック」の発生を抑える。
同社は20年前から藻場増殖礁や増殖プレートなどを手掛け、関連会社がある長崎県を中心に販売してきた。今回の新製品も長崎県を中心に導入し、設置場所などの検討も含め、効果を検証する。
住友大阪セメントの小堺規行常務執行役員は「脱炭素は様々な技術を組み合わせなければ実現できない」と話し、セメント製造以外の分野でも脱炭素を推し進める考えを示した。
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