百貨店各社で歳暮商戦が始まった。三越伊勢丹は旧来の贈答品用だけでなく自宅用も充実させ、電子レンジ調理できる料亭弁当など実用的な商品をそろえる。食品値上げの影響で百貨店の食料品の売上高は9月まで前年同月比で3カ月連続の減収となるなど苦戦がみられ、歳暮を通じて売り上げの底上げを狙う。
30日、三越日本橋本店(東京・中央)でギフトセンターが開設し、午前10時の開店と同時に多くの客が注文窓口に列を作った。夫婦で訪れた70代女性は「仕事を辞めてから贈る数は減ったが、今年もお世話になっている人に贈る予定だ」と話し、毎年買っているという自宅用の商品も吟味していた。
三越では「タイパ(タイムパフォーマンス)」を軸に時短調理できるギフトを打ち出した。老舗料亭「日本料理なだ万」の「料亭の彩り弁当」(5400円)は冷凍品を解凍後に電子レンジで温めるだけで本格的な味を楽しめる。海鮮チゲ鍋(1万800円)など寒い冬に体が温まる商品も取りそろえる。
高島屋は4日から電子商取引(EC)の申し込み受付が始まり、31日から店頭の受け付けも始める。2023年の歳暮から始めたカード型のカタログギフト「e美味マルシェ」(5500〜3万3000円)を今年も販売する。受け取った相手が欲しい商品を選べるもので、23年は想定以上の反響があったという。相手の好みがわからない場合や、よりカジュアルに贈りたいという需要を取り込む。
大丸松坂屋百貨店は8日からECの注文を開始し、店頭は11月1日から受け付ける。歳暮で初めて本格的に定期便を導入した。EC限定の「おいしい定期便 月イチごほうび」は毎月1回、3カ月連続でアップルパイやギョーザなどの商品が届く。
松屋は自宅配送限定の商品を前年比約6割増の138種類をそろえた。ワインの飲み比べ6本セット(7480円)やクリスマスケーキ(5431円)などパーティーにも使える手ごろな商品を充実させた。
日本百貨店協会(東京・中央)によると、9月の全国百貨店の食料品売上高は前年同月比1.6%減の982億円と3カ月連続の減収だった。節約志向の高まりもあり、歳暮市場は縮小している。
一方で自分へのご褒美や知人へのお礼、帰省土産など従来の歳暮需要と異なる購買行動も広がっている。三越日本橋本店の丸井良太店長も「若い世代には歳暮を儀礼的ではなく、仲間や家族と食の祭典として楽しんでほしい」と話した。
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