西武鉄道は21日、駅のロッカーで消費期限の近い食品が購入できるサービスを開始する。食品ロス削減に向けたシェアサービスを展開するスタートアップ、コークッキング(埼玉県東松山市)などと連携し、同県内と東京都内の19駅で始める。サービスの利便性や立地を生かし、社会や自然環境に配慮した消費行動に取り組みやすくする。
サービスには西武鉄道が沿線に設置しているSPACER(スペースアール、東京・中央)のスマートロッカーを活用する。ロッカーは手元のスマートフォン操作で開け閉めできるのが特徴で、両社はオンラインで購入した商品をロッカーで受け取ることができる「BOPISTA(ボピスタ)」を4月から本格稼働している。
21日から、スマートロッカーをコークッキングの「TABETE(タベテ)」というサービスと連携させる。TABETEでは、飲食店などで閉店時までに売れ残り、消費期限内で安全に食べられる食品を購入できる。駅のロッカーを使うことで店舗を訪れずに商品を受け取れるようにした。
サービスは購入者がTABETEのアプリ上で食品を注文することで、店舗に注文情報を送信。その後、配送員が食品を受け取り、ロッカーに届ける仕組み。21日のサービス開始時点ではコークッキングの運営する直売所で扱う野菜などを購入できるが、取扱店舗数は「順次拡大していく予定」(西武鉄道)としている。
新サービス導入の背景には、駅のインフラを活用したスマートロッカーの普及がある。SPACERは西武鉄道のほかJR西日本の駅や大規模商業施設などに導入が進み、都市部を中心に身近なインフラとなりつつある。2024年は前年比3.3倍の1800台を設置する予定だ。
一方、西武鉄道にとっても協業のメリットは大きい。ロッカーを置く19駅の中には、池袋(東京・豊島)や高田馬場(同・新宿)など若者らが多く集まる駅に加え、ひばりヶ丘(東京都西東京市)や所沢(埼玉県所沢市)など、ファミリー層に人気なエリアの駅も含まれる。サービスの多角化で駅や沿線の利便性を高めることで自社の事業強化にも役立てる狙いだ。
足元では若い世代を中心に社会・自然環境の持続可能性を意識した購買行動が広がっている。一方、時間対効果(タイムパフォーマンス)も消費を左右する重要な要素となっている。
通勤・通学で利用する駅はサービスとの親和性が高く、顧客層や取扱店、購入数の増加につなげる。西武グループ全体で持続可能な開発目標(SDGs)の推進に取り組んでおり、こうした姿勢を社会に発信するきっかけにもなる。
(荒牧寛人)
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