独自技術「OCCC法」を用いて作った酸化ガリウムの単結晶(17日、仙台市)

東北大学発スタートアップのFOX(仙台市)は17日、省エネにつながる次世代パワー半導体向けに「酸化ガリウム」を用いた半導体基板(ウエハー)を量産すると発表した。独自技術「OCCC法」で、高純度な基板を安く造れるようにする。4インチ基板の開発で技術を高め、2028年にも6インチ基板の量産技術を確立する。

FOXは同じく東北大発スタートアップのC&A(仙台市)や東北大の吉川彰教授の研究グループから関連事業を引き継ぎ、24年4月に設立した。製造拠点は東北地方に設ける方針で、33年までの新規株式公開(IPO)を視野に入れる。

小野寺晃社長は17日の記者会見で「酸化ガリウムパワー半導体の製造コストの6割超を占めている基板コストを低減し、社会実装・普及を後押しする」と強調した。

FOXの小野寺社長㊧と東北大学の吉川教授(17日、仙台市)

FOXは9月に半導体商社マクニカや岩谷産業などのコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)から資金調達した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金も合わせると7億7000万円を集めた。マクニカと岩谷産業は市場分析や顧客ニーズの把握、安定的な原材料の調達などでFOXを支える。

新たな結晶化技術のOCCC法を用いると、4インチ基板の場合、製造コストは1万円台と従来手法の100分の1程度になるという。水で冷やした銅の容器に原料を入れ、従来手法より高い周波数の電磁波を流して原料を溶かして結晶をつくる。

パワー半導体は電圧を制御する役割をもち、電気自動車(EV)やデータセンターに使われる。酸化ガリウムは既存のシリコンや炭化ケイ素(SiC)と比べて高い電圧や大きな電流に耐えられる。EVに搭載すれば走行距離を延ばすことができるため注目されているが、製造コストが課題となっている。

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