冷凍食品の自動販売機「ど冷えもん」を手掛けるサンデン・リテールシステム(東京・墨田)がアプリでファンの開拓に取り組んでいる。設置されているもののアプリ内の地図に登録されていない「隠れど冷えもん」を探すという内容で、愛着を深めてもらう狙い。実は取引形態の関係で、アプリに登録されている自販機数は全体の約4割。9月末時点で、未登録だった自販機の2割にあたる1000台超が発見されている。
【関連記事】
- ・「ほっかほっか亭」冷凍弁当参入 1食250円、共働き向け
- ・ニップン、冷凍食品の畑中食品を子会社化 60億円で
- ・冷凍食品市場、ホットに過去最高 家庭向けは9年ぶり減
ど冷えもんは総菜や精肉、ケーキなど様々な冷凍食品を販売する自販機だ。2021年に食品メーカーや飲食店など向けに発売。新型コロナウイルス下で外食する機会が減り、家庭で手軽に食べられる冷食需要が伸長したことから急成長し、現在は全国で1万台近くが設置されている。
22年7月には消費者の利用機会を増やそうと、全国のど冷えもんの設置場所や販売する商品、在庫状況が検索できるほか、商品の感想などが書き込める無料のスマートフォン向けアプリ「ど冷えもんGO」をリリースした。
すると、利用者から「地図に載っていないど冷えもんがある」といった不満の声が寄せられるようになった。実はアプリの地図に登録されている自販機は全体の4割程度にとどまる。ど冷えもんの導入業者の中でも、オプション契約を結んでいる業者の自販機しか地図に表示されない仕組みになっているためだ。サンデン・リテールシステムも全ての自販機の設置場所を把握しているわけではない。
そこで同社が考えたのが消費者自身に地図に載っていないど冷えもんをゲーム感覚で登録してもらうという仕組みだ。23年11月から、利用者が未登録の自販機をみつけたらアプリから申請し、同社が確認後に地図に掲載する機能を加えた。登録数が多いユーザーの上位10人はランキング形式で発表する。
アプリの責任者、茂木利幸氏は開発にあたり、「隠れているものを探す楽しさを意識した」と話す。24年9月末時点で未登録だった自販機の2割にあたる1000件超の隠れど冷えもんが発見された。自販機マニアによる申請だけでなく、ライトユーザーが見かけたど冷えもんを登録するケースも多いという。
「売り上げを追いかけるだけでなく、ど冷えもんのコミュニティーを作りたい」と茂木氏は話す。現在は新たに自販機のオーナーがアプリの利用者に直接商品をアピールする機能を検討している。今後も機能を加え、9月末時点で6万だったアプリのダウンロード数を25年7月をめどに10万に増やしたい考えだ。
日本自動販売システム機械工業会(東京・新宿)によると、23年12月末時点のインスタント麺や冷凍食品、アイスクリームなどの食品自動販売機の普及台数は8万1000台。同会は「冷凍食品の自販機のニーズには一服感がみられる」と指摘するものの、食品自販機全体では前年比4%増えている。サンデン・リテールシステムはアプリを通じて利用者のど冷えもんに対する愛着を深め、利用を伸ばしていく考えだ。
(柴田唯矢)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。