記者会見で謝罪する川崎重工業の橋本康彦社長(右)=27日、東京都港区

川崎重工業は27日、船舶エンジンの検査不正について社内調査の途中経過を発表した。同日、国土交通省へ調査報告書を提出した。過去に担当者から管理者に不正の問題提起があったが是正できなかったとし抜本的な再発防止策を講じる。潜水艦乗組員への金品提供問題の調査が続く防衛事業でも社長直轄の新組織を設立しガバナンス(企業統治)体制を強化する。

同日、東京都内で記者会見した橋本康彦社長は「度重なるコンプライアンス違反についてご心配、ご迷惑をおかけし心からおわび申し上げます」と陳謝した。経営陣の責任については「組織的な問題で経営陣も責任を感じているが、まずやるべきは2度と起こさない体制を作っていくことだ」と述べるにとどめた。

船舶エンジンについては窒素酸化物(NOx)の規制対象のエンジン674台を社内調査したところ、商船向けエンジン673台でデータの改ざんが見つかった。調査では燃料の消費量に関わる不正588台、消費率に関わる不正565台などが確認された。顧客の要求する仕様に応えたり、性能のばらつきを抑えたりするため不正が行われたという。NOxの放出量規制を逸脱しているかは確認中としている。

報告書では不正の原因としてコンプライアンス違反と分かっていても言い出せない組織風土や、品質よりも納期や利益を優先する意識があったとした。

国交省は27日、国がNOx放出量確認試験に立ち合う条件で、NOx規制に適合した製品であることを示す証書の交付を再開すると発表した。同省は問題が発覚した8月から証書の交付を止めていた。証書の交付が再開されれば川崎重工はエンジンの出荷が可能になる。

裏金による潜水艦乗組員への金品提供問題について橋本社長は「裏金がこの時代にまだ存在し弊社で行われていたことがショックだった。大きな責任を感じている」とした。その上で「厳しい管理も敷いており2度と発生しないと考えている」と述べた。

川崎重工の防衛事業はこれまで船舶や航空、精密機械、バイクなど複数の部門にまたがってきた。今後は11月1日に新設する「防衛事業管理本部」で受発注やコンプライアンス、機密情報漏洩対策などを一元管理する体制に改める。

【関連記事】

  • ・川重、船舶エンジン検査不正 2000年以降出荷のほぼ全て
  • ・川崎重工、特別調査委員会を設置 船舶用エンジン不正で

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。