シグナは、報告書での指摘が「名誉毀損」にあたるとしてFTCを訴えた=ロイター

【ニューヨーク=西邨紘子】米医療保険大手シグナ・グループ傘下の薬剤給付管理(PBM)大手エクスプレス・スクリプツは17日、ミズーリ州の連邦地方裁判所に米連邦取引委員会(FTC)とリナ・カーン委員長を提訴した。PBMの一部の商慣行が医療費の上昇を招いていると指摘したFTCの報告書が「不正確で偏見に基づき、名誉毀損に当たる」と主張し、撤回を求めた。

FTCは2022年にPBMの事業慣行について調査を開始し、7月に中間報告書を公開した。この報告書のなかで、PBMが患者の医療コスト引き下げよりも利益率の高い医薬品を推奨することにより、医療費の引き上げを招いているなどと指摘した。

シグナは、この指摘に対して「政治的で証拠に基づかない」と主張。FTCのカーン委員長が「(現職)就任前から『アンチPBM』で(その事業慣行に)偏見を持っている」とした。FTCの報告書は「エクスプレス・スクリプツのビジネスと評判を不当に傷つけた」と主張し、FTCがウェブサイトから報告書を撤去することなどを求めている。

米国で、PBMは保険会社などに代わり、製薬会社などと処方薬の割引率などを交渉する役割を持つ。近年は大手医療保険とPBMの事業統合が進み、医薬品の価格決定の仕組みが複雑さを増した。

米国では薬価の高騰が社会問題となっている。製薬会社から利益を得る商慣行が薬価上昇を招いているとして、米議会などからPBMに対する批判が強まっていたことがシグナとFTCの今回の対立の背景となっている。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は7月、関係者の話として、糖尿病治療薬インスリンの価格交渉を巡り、FTCがエクスプレス・スクリプツを含むPBM大手3社を提訴する準備を進めていると報じていた。

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