東京都は17日、土地取引の指標となる都内1288地点の7月1日時点の基準地価を公表した。住宅地、商業地、工業地とも前年と比べ上昇し、上昇幅も拡大。上昇率は商業地が前年比8.4%で3年連続、住宅地は前年比4.6%で12年連続のプラスとなった。地価の上昇に伴い、湾岸地域に集中するタワーマンションが高騰し、さらに23区内の住宅価格に影響を及ぼしている。

◆上昇率1位は中央区、今後も「一段と上がる可能性」

 東京23区平均の住宅地の上昇率は6.7%(前年4.2%)と加速した。最も高いのは湾岸地域にタワーマンションが集積する中央区の12.4%(前年4.4%)で、住宅価格も押し上げられている。

タワーマンションが並ぶ晴海地区(手前)と勝どき地区(後方)=東京都中央区で、本社ヘリ「あさづる」から(安江実撮影)

 住宅地の上昇率トップ10には、中央区から月島、佃、勝どき、晴海の4地点が入った。羽田空港と都心を結ぶJR線「羽田空港アクセス線」やこれに接続する地下鉄新線の整備構想があり、都心への交通利便性が高まれば「住宅価格は一段と上がる可能性がある」と不動産経済研究所の松田忠司上席主任研究員はみる。  中央区は都心の空洞化に伴い、1990年代まで人口が減っていた。93年に対策としてマンションなど住宅建設の容積率緩和に踏みきり、湾岸に30棟以上が林立する「タワマン銀座」ができ、人口も回復した。

◆中古物件の価格・家賃、2021年以降で最も高額に

 中央区など都心の高額物件に押し上げられ、23区では新築マンションの価格が高騰している。同研究所によると、今年上半期1戸あたりの平均価格は1億855万円で、2年連続で1億円を超えた。ただ、今年は建設業界の働き方改革などによって着工が遅れ、供給戸数は昨年比3割減に落ち込む。  新築の供給数が減ることに伴い、中古マンションの市場が大きくなり、23区は中古物件の価格も高い。不動産情報サイトなど運営のLIFULL(ライフル)の調査によると、8月のサイト掲載平均価格は家族向けが6583万円、単身者向けが4503万円となり、いずれも調査を始めた2021年以降で最も高くなった。賃貸物件の家賃も上昇傾向にある。

◆「住宅のセーフティーネットを手厚く」

 東京都立大の饗庭(あいば)伸教授(都市計画)は「低家賃の住宅が少なくなる可能性があり、住宅のセーフティーネットを手厚くするべきだ」と指摘する。06年施行の住生活基本法によって住宅供給は民間が中心となり、公共住宅政策は縮小した。新型コロナウイルス禍で失業者が急増したような景気変動のリスクを踏まえ、「民間の住宅開発には困窮者向けの住宅を一定数造るよう求めてはどうか」と提案した。(押川恵理子) 

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