物価高の影響で子どもの教育費への不安が高まっています。ある調査では、習い事や学習塾などへの子ども1人あたりの「学校外教育費」が今年、過去最高を記録しました。月謝の値上げに加えて、複数の習い事に通う子どもが増えていることも要因とみられます。
- 【連載】「早期教育」へのギモン
「物価高騰やエネルギーコスト増加を受け、会費の改定をさせていただきます」
東京都内に住む40代の会社員男性は今夏、子どもが通う水泳教室から値上げの連絡を受けた。教室に通うのは小学生と未就学児の2人で、合わせて月2千円ほどの値上げ。子どもたちは水泳を含めてそれぞれ4~5種類の習い事に通っているという。
男性は「物価高で生活費が上がっているし、他の習い事でも値上げがあったばかり。子どもが頑張っているのにやめるという選択肢はありませんが、痛い出費です」と言う。
ソニー生命保険が今年3月に発表した子どもの教育資金に関する調査によると、スポーツや芸術などの習い事、家庭学習、教室学習などにあてる家庭の「学校外教育費」は、子ども1人あたり月に平均1万7593円と、この項目について調査を始めた2015年以降、過去最高額となった。
調査には大学生以下の子どもを育てる1千人が回答。未就学児は平均で9218円、小学生は1万8914円、中高生は2万5675円だった。とりわけ、未就学児は15年と比べて2倍、小学校低学年も1.8倍まで増えている。
同社は「ここ数年の傾向をみると未就学児は家庭、教室学習の費用が伸びており、かけ持ちしている子どもが増えているのではないか。小学校低学年は特に教室学習が増えており、月謝単価の上昇や月謝の高い教室の増加、かけ持ちが要因として考えられる」としている。
小学生から社会人になるまでに必要と思う教育資金について、未就学児の保護者に尋ねたところ、平均予想額は1439万円とこちらも過去最高額となった。3年前の21年調査では1266万円だった。
将来の教育資金について「不安を感じる」と答えた保護者は全体の8割を超え、その理由を複数回答で尋ねたところ、今回は「物価の上昇」(55.7%)が突出して多かった。「教育資金がどのくらい必要となるかわからない」(35.2%)が続いた。
調査では保護者の約6割が「子どもの学力や学歴は教育費にいくらかけるかによって決まると感じる」と答え、約7割は「早期の知育や英才教育は子どもの将来のために重要だ」と考えていることも分かったという。
「中長期的な視点を忘れないで」
調査の分析に携わったファイナンシャルプランナーの豊田真弓さんは「日々の暮らしのなかで物価上昇を実感し、多くの方がいまの教育資金の備え方で大丈夫なのか不安を抱き始めている」と言う。先を見通すのが難しい時代、子どもにたくさんの選択肢を用意し、可能性を広げてあげたいと考える人は多い。
豊田さんは、19年10月に始まった幼児教育・保育の無償化で生まれた金銭的な余裕が習い事にまわった可能性も指摘する。「中長期的な視点を忘れて、早期教育にお金をかけ過ぎると自分の老後にツケがまわります。まずは将来の進学に必要な教育費に対する備えができているか、家計をチェックしてほしい。教育資金の一部を『長期・積み立て・分散』で運用するなど、リスクを抑えつつ物価高に負けない家計をつくっておくことも重要です」と話している。(平井恵美)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。