不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL)は5日、世界各国・地域の不動産市場の情報開示姿勢などを評価した「透明度調査」の結果を公表した。日本は11位と2022年の前回調査から順位を1つ上げ、アジア勢で最高位だった。ビルの環境認証や省エネ規制の推進など、建物の環境対応で高い評価を受けた。
賃料や空室率といった不動産市況データの充実度や不動産取引の透明性、環境に配慮した建物づくりを促す仕組みなど6つの分野で、各市場を点数化した。1位は英国、2位はフランスと、透明度の高い上位13カ国の「高」市場グループのうち欧州勢が7カ国を占めた。アジア勢は日本に続いてシンガポールが13位と初めて同グループ入りした。
日本はサステナビリティー(持続可能性)分野の改善が順位の上昇に寄与した。新築住宅にも断熱化を義務付けるといった環境規制の強化に加え、上場企業を中心に気候変動リスクの情報開示が進んでいるとして、同分野は前回の6位から2位に上がった。
一方で欧米などの上位国と比べると、賃貸借契約や共益費の開示が不十分なことなどを理由に「取引プロセス」が33位と低迷した。上場法人のガバナンスや詳細な市場データの開示も相対的に遅れているとした。JLLの大東雄人・日本リサーチシニアディレクターは「オフィスの使い方や出社率をリアルタイムで可視化するなど、IT(情報技術)活用による透明度の向上が欠かせない」と指摘した。
前回調査と比べた透明度スコアの改善度では、インドが最も高かった。将来的な経済成長を見込んで都市開発プロジェクトが活発化する中、建築規制の簡素化や土地登記データのデジタル化に取り組んでいる点などが評価された。不動産テックの活用が進んでいるとして、サウジアラビアやドバイ、アブダビなど中東勢も上位に入った。
透明度調査は1999年に始め、基本的に2年ごとに発表している。24年は89カ国・地域、151都市を対象とした。ベン・ブラスラウ・グローバルチーフリサーチオフィサーは「(欧米の金利上昇など)景気の変動リスクが高まる中、透明度の高い不動産市場に投資マネーが集まりやすくなっている」と語った。
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