平日朝夕のJR京葉線・海浜幕張駅のホームは通勤・通学客でごった返す

JR京葉線のダイヤをJR東日本が9月1日に再び改正する。3月の改正で快速を減便したことが千葉県内の沿線自治体に極めて不評で、半年たたずに一部の快速を復活させる異例の見直しを余儀なくされた。千葉市の神谷俊一市長は「70点」と評し、騒動はこれでいったん落ち着く見通し。23日に公表された再改正ダイヤの詳細を精査した。

2023年末にJR東が発表(3月16日実施)した突然の改正計画に沿線自治体の首長はがくぜんとした。一宮町や茂原市など外房地域はもちろん、とりわけ千葉市のショックは大きかった。朝夕の快速を全面的に「各駅停車」に置き換えるという変更だったからだ。東京方面への通勤・通学に時間がかかり、住民の生活に支障がでる。

神谷市長自身が有力経済人を伴い東京のJR東本社に抗議に乗り込むなど、沿線住民にとどまらない注目を集めた。あまりの勢いに当初はかたくなだったJR東も折れた。半年もたたずにダイヤ編成の基本方針を見直すのは「相当に異例なことだ」(同社)。

幕張地区は、公園とオフィス街、ホテル街、住宅街が整備されている千葉市の目玉

9月1日からの再改正では、外房地域など千葉市以南からの通勤者も東京への速達性がそれなりに回復する。週末サーファーと平日の会社勤めを両立する住民がいる一宮町では15分、東京までの乗車時間が短縮する。

千葉市では中核の海浜幕張駅で朝の上り快速が3月の改正前の2本から4本になり、夜に同駅へ到着する下り快速は2本復活する。

ただ、JR東は沿線自治体の要望を全面的に受け入れてはいない。快速を各駅に置き換えた3月のダイヤ改正は、混雑緩和などを狙って綿密に準備したものだった。人口減少時代に入り、ほかのローカル線では路線の存廃を含めた「あり方」を巡り自治体と協議を続けている。京葉線は赤字でないとはいえ、自治体の要望を丸のみした先例を残すのは都合が悪い。

「ノンストップ」の京葉通勤快速は結局廃止に(新木場駅)

まず、1990年に全線開通した京葉線の名物電車だった、千葉市南部の拠点・蘇我駅と新木場駅(東京・江東)を直結する「ノンストップ快速(追加料金なし)」の復活は拒否した。さらにもう一つの隠れた焦点が夕方〜夜の海浜幕張駅から東京方面への上り快速だ。18時以降に海浜幕張を出る快速は3月の改正前まで平日2本あったが、ゼロのままにとどめた。

これは神谷市長にしてみれば減点ポイントと言える。千葉市は幕張地区を重要なオフィス街と位置づけ、東京方面から通うサラリーパーソンもいる。実際にイオングループの本社や富士通、日本IBMなどの重要拠点があり、市長は企業誘致に全力をあげている。「改悪」(市長)状態とした現行ダイヤよりは改善されるが、不十分だ。それでも市長は「70点」を与えて矛を収めた。

神谷市長は、ダイヤ再改正の内容を「70点」と評価した

ダイヤ再改正で新たに生まれた反発もある。千葉市の隣の習志野市だ。9月のダイヤ改正で新習志野駅から乗車可能な各駅の本数が減る。宮本泰介市長は「JRはころころダイヤを変えすぎ」と非難し、同駅の乗車本数を復活させるよう求めている。とはいえ習志野市だけの抗議でダイヤを見直す見込みは薄そうだ。もともとJRは同市内の総武線・津田沼駅を厚遇している。

前千葉市長で、いまやJRと連携して全県の鉄路に目配りしなければならない熊谷俊人知事の対応も興味深かった。一連の騒動に一定の距離を置き「(9月改正という素早い対応に)大変感謝している」とJRに謝意を示し、事態の収束を図った。沿線経済の将来も絡んで〝炎上〟した京葉線問題はひとまずの妥協点を見つけたと言えそうだ。

(丹田拡志)

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