2024年4〜6月期に純利益が同期間として過去最高となったのは431社で、全体の5社に1社にのぼった。生成人工知能(AI)関連の投資が旺盛な半導体製造装置のほか、歴史的な円安を追い風にした自動車などで目立った。東京証券取引所などが資本効率改革の要請を強めるなか政策保有株を売却し、利益を押し上げた企業もあった。

9日までに24年4〜6月期決算を発表した3月期企業(金融などを除く)のうち、過去5年以上で比較が可能な約1920社を対象に日本経済新聞が集計した。純利益が過去最高だった企業は全体の22.4%にあたる。社数比率は前年同期の21.5%をやや上回った。

巨額の投資が先行している生成AI関連では、半導体製造装置を手掛ける東京エレクトロンやディスコ、SCREENホールディングスが過去最高益となった。半導体メーカーの大型投資計画が相次ぎ、その恩恵が装置企業に波及した。東エレクの河合利樹社長は「先端品の投資が本格化している」と指摘する。

歴史的な円安の恩恵を受けたのが自動車だ。トヨタ自動車やホンダ、マツダなど最高益が相次いだ。主力の米国市場の需要鈍化やコスト増は重荷となったが、円安による増益効果が大きかった。4〜6月の期中平均レートは1ドル=約156円と前年同期より19円弱下落した。トヨタでは円安が連結営業利益を3700億円押し上げた。

円安などを背景に盛り上がる訪日客が6月まで4カ月連続で節目となる300万人を超えており、ホテルを運営する鉄道会社にも恩恵をもたらしている。過去最高益となる企業が多かった。西武ホールディングスや東急、京王電鉄などは人流の回復が鉄道やホテル・レジャー施設の利用拡大にもつながった。

食品での最高益も目立った。原材料高を受けた値上げの効果が大きい。森永製菓は国内で菓子販売が4月に値上げした後も好調を保った。アイスクリームなどの冷菓事業も伸び、カカオ豆や油脂など原材料高の影響を吸収した。食品のなかでもキッコーマンや東洋水産、日清製粉グループ本社は海外事業がけん引した。

資本効率改革が動き出したことも利益に好影響を及ぼしている。日清オイリオグループは政策保有株式など投資有価証券の売却益として26億円を計上した。ヤクルト本社は売却益19億円を計上して増益を確保した。いずれも最高益を記録した。

上場企業の25年3月期通期の純利益は前期比1%減となる見通しだ。期初時点での2%減の予想から減益率が縮小するものの、なお増益に転じられずにいる。停滞を続ける中国経済のほか、急激な円安修正や米国景気の先行きにも警戒感がある。

ソニーフィナンシャルグループの宮嶋貴之シニアエコノミストは「国内消費は強弱が入り交じり、円高や米国の景気減速が想定以上に進む可能性がある。不確実性が増すと、値上げや設備投資の勢いが鈍る」と話す。経営を巡る環境の荒波に負けず、独自の技術やサービスを武器に稼ぐ力を伸ばせるかが課題になる。

(鎌田旭昇)

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