AI向けにテキストや画像、動画などのデータに注釈を付ける「アノテーション」などのサービスを提供する米スケールAIは、米インテルのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)などから10億ドルを調達した=スケールAIのサイトから
スタートアップへの投資が世界的に低迷するなか、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)による投資が活発だ。2024年4〜6月期のCVCを通じた資金調達総額は156億ドル(約2兆3000万円)で2四半期連続で増えた。その半分以上が一回の調達額が1億ドル以上の「メガラウンド」によるもので、中でも人工知能(AI)を活用したスタートアップがけん引している。一方で、AIに注力していない企業による調達が軒並み減少するなど明暗が分かれる実態が明らかになった。 日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

2024年4〜6月期のCVCが参加した資金調達ラウンド(CVC出資ラウンド)の調達額は156億ドルと、前四半期の154億ドルからやや増えた。増加は2四半期連続となった。一方、調達件数は前四半期比12%減の782件と、18年1〜3月期以降で最も少なかった。

調達額増加のけん引役はAI企業の大型ラウンドだった。4〜6月期のCVC出資の大型ラウンド上位5社のうち、米スケールAI(Scale AI、調達額10億ドル)、仏ミストラルAI(Mistral AI、5億200万ドル)、コーヒア(Cohere、カナダ、4億5000万ドル)の3社がAIインフラ企業だった。

以下は24年4〜6月期のCVC投資の主な状況だ。

世界の24年4〜6月期のCVC出資ラウンドの調達額は156億ドルに増えた。調達額の半分以上(84億ドル)を占めたのは、1回の調達額が1億ドル以上のメガラウンドだった。一方、世界の調達件数は前四半期比12%減の782件だった。アジアは24%減と落ち込みが目立った。

CVC出資ラウンドの調達額は156億ドルに増加、半分以上はメガラウンド(CVCが参加したエクイティ=株式による調達額と調達件数、公表ベース)

24年のCVC出資ラウンドの平均調達額は2660万ドルで、23年通年の2090万ドルから27%増えた。平均調達額が増えた一因はメガラウンドだった。例えば、スケールAIは米半導体大手インテル、同アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、米シスコシステムズ、米業務ソフト大手サービスナウのCVCが参加したシリーズFで、米ウィズ(Wiz)は米セールスフォース・ベンチャーズが参加したシリーズEでそれぞれ10億ドルを調達した。

デジタルヘルス企業のCVC出資ラウンドでの調達額は前四半期比57%減の6億ドルと、17年10〜12月期以降で最も少なかった。リテールテック企業も52%減、フィンテック企業も8%減だった。スタートアップ投資全体が低迷するなか、AIに特に力を入れているわけではない企業は資金調達で苦戦を強いられている。

米国、レイトステージ(後期)ラウンド全体の58%占める(米国とその他の地域の後期ラウンド件数の割合)

中国のCVC出資ラウンドでの調達額は前四半期比60%減の2億ドルだった。調達件数も24%減の59件と、15年以降で最も低い水準にとどまった。中国のテック市場はマクロ経済への懸念の高まり、地政学的な緊張の高まり、厳しい規制環境など大きな試練に直面している。

中国の24年4〜6月期のCVC出資ラウンドの調達額、2億ドルに減少(エクイティによる調達額と調達件数、公表ベース)

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