決算会見に臨む富永満之社長(13日、神戸市内)

アシックスが13日発表した2024年1〜6月期の連結決算は、純利益が前年同期比70%増の422億円だった。1〜6月期として2期連続で最高益を更新した。ブランド戦略が奏功し、国内外で「スポーツスタイル」と呼ぶ高価格帯のスニーカーを中心に伸ばした。株主還元を手厚くするため最大200億円の自社株買いをすることも発表した。

売上高は18%増の3421億円、営業利益は76%増の589億円だった。「スポーツスタイル」と呼ぶ日常使いのスニーカーは復刻モデルを中心に販売が伸び、北米や中国では約2〜3倍の増収となった。高価格帯の「オニツカタイガー」もインバウンド(訪日外国人)需要を取り込み、日本での売上高は162億円と前年の2倍を超えた。

主力のランニングシューズではエントリーモデルの販売を絞り、高価格帯に注力する方針を掲げる。地域別では中国や東南・南アジア、日本などが好調だった。富永満之社長は同日の記者会見で「苦戦をしていた北米市場でもかなり回復できている。競争が激しい市場だが、北米でも利益を重視する戦略が浸透してきた」と話した。

粗利益率は55.5%と4.5ポイント改善した。自社のインターネット会員サービス「OneASICS(ワンアシックス)」の会員数が増え、利益率の高いEC(電子商取引)の拡大につなげた。ECの売上高は35%増えた。

11日閉幕したパリ五輪もブランド向上に追い風となった。出場した契約選手は約300名と前回の東京大会より約5割増えた。注力するマラソンでは男子でバシル・アブディ選手が2位となり、同社のシューズ着用選手として16年ぶりのメダル獲得となった。

アシックスはグループが保有する政策保有株式を24年内にすべて売却すると7月に発表した。その売却益などを見据え、自社株買いをする。発行済み株式総数(自社株をのぞく)の1.4%程度にあたる1000万株を上限に14日から10月31日までに買い付ける。

銀行などが持つアシックス株も国内外に売り出した。7月23日に条件決定し、30日が受け渡しだった。売り出し価格は2442円50銭としていたが、8月13日の終値が2324円となるなど足元の株価が軟調だったことが自社株買いの一因になったとみられる。

7月に上方修正した24年12月期の業績予想は据え置いた。純利益は前期比64%増の580億円を見込む。1〜6月の通期予想に対する進捗率は73%に達する。最高財務責任者(CFO)を務める林晃司常務執行役員は「7月の売上速報値は単月として過去最高だった。引き続き高いブランド力をもって下期も取り組みたい」と語った。

同社の時価総額は急拡大している。今期業績予想の上方修正を好感し、7月には一時2兆円を突破、2年間で約4倍の水準になった。足元でも1.8兆円ほどで推移する。

【関連記事】

  • ・アシックスCEO、パリ五輪で狙う頂上 厚底でナイキ猛追
  • ・サステナ素材や盗撮防止…五輪にアシックスやミズノの技
  • ・アシックス、政策保有株すべて売却へ 銀行側も売り出し

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。