建機の需要見通しを説明する建機工の山本明会長(9日、東京都千代田区)

日本建設機械工業会(建機工、東京・港)は9日、2024年度に国内で生産する建設機械の出荷額が前年度比5%減の3兆1610億円になるとの予測を発表した。従来予想は微増だったが、欧州の金利高止まりなどで輸出が伸び悩む。減少は4年ぶり。同時に発表した25年度の予測は1%増と弱含み、先行きに慎重な見方が広がっている。

建機工が7月に会員企業61社に聞き取った予測を集計した。輸出向けは7%減の2兆1860億円と、1月時点の予測から約1500億円落ち込んだ。9建機のうち、トラクターや油圧ショベルなど8建機の出荷額が前年度を下回る見通し。

輸出の減少は欧州での金利の高止まりやアジアでの金利上昇が影響する。高い利払いを避けるため、建機向けの設備投資を控える動きが各地域で広がる。英イングランド銀行(BOE)や欧州中央銀行(ECB)が相次ぎ利下げに動いたものの、効果は限定的と見る。ロシアによるウクライナ侵略も続き、周辺地域への輸出減少といった地政学リスクも欧州中心に残る。

コマツは24年4〜6月期の連結純利益(米国会計基準)で過去最高を達成した。ただ値上げや円安の影響が大きく、主力の機械・車両部門では欧州などの販売が落ち込んだ。同社は24年度に主要7建機の世界需要が5〜10%減になると予測する。

日立建機は24年4〜6月期の連結純利益(国際会計基準)が前年同期比22%減だった。欧州や東南アジアの販売が不振だった。同社も24年度に油圧ショベルの世界需要が前年度比7%減になるとみる。

建機工の聞き取りでは、24年度の想定為替レートを1ドル=156〜160円とみる会員の割合が最も多かった。ただ足元では会員企業の想定為替レートに比べて10円近く円高に振れている。

建機工の山本明会長(コベルコ建機社長)は9日の記者会見で「円高は一般的に減益要因になる一方、原材料や物流費の減少につながる可能性もある。各社によって円高の対応は分かれていくだろう」と述べた。

11月には米大統領選挙を控える。出荷額の4割近くを北米が占めており、新大統領がインフラ投資の拡大に踏み切れば建設需要の高まりから日本の建機業界に追い風になるとの見方がある。山本会長は「需要が変化した際に備え、強い企業体質をつくることが求められている」と強調した。

国内向けは1%減の9750億円と、1月時点に比べて約210億円減った。9建機のうち、6建機の出荷減少を見込む。公共投資や民間設備投資は堅調に推移するとの予測が多く、輸出ほど需要は弱含んでいない。

25年度の出荷額は3兆2033億円との予測になった。油圧ショベルやミニショベルなどが輸出向けで需要回復する見込み。もっとも、過去最高だった23年度(3兆3281億円)には到達しておらず、本格回復は道半ばとなりそうだ。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。