経済産業大臣賞に選ばれた「清水建設 温故創新の森 NOVARE」

日本経済新聞社とニューオフィス推進協会は、快適で機能的なオフィスを表彰する第37回「日経ニューオフィス賞」を決定した。応募総数153件の中から16件が「ニューオフィス推進賞」に選ばれた。うち経済産業大臣賞は「清水建設 温故創新の森 NOVARE」(東京・江東)に決まった。働き方の進化に伴い、受賞した各オフィスには自然な交流と自律的な学びを促す傾向が顕著にみられる。9月10日、東京・大手町の日本経済新聞社本社ビルで表彰式を開く。受賞オフィスは以下の通り。

▼清水建設 温故創新の森 NOVARE(経済産業大臣賞)=2019年発表の長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」で掲げた企業像「スマートイノベーションカンパニー」の実現を目指し整備した複合オフィス。事業構造、技術、人財のイノベーションを推進し、社会とのコミュニケーションを進める場に位置付けている。中心機能と社内外のイノベーション活動の拠点NOVARE Hub、ものづくりの原点とデジタルなものづくりを研修するNOVARE Academy、同社の歴史資料を展示したNOVARE Archivesを備える。江東区指定文化財の旧渋沢邸も擁し、歴史とのつながりをもってイノベーションをスパイラルアップし「超建設」を具現化させる機能を持つ。

▼タケダグローバル本社ビル 6-19階(東京・中央、クリエイティブ・オフィス賞)=2018年に開業した本社ビルの6〜19階をリニューアルした。多様な働き方を目指す「ウェイズ・オブ・ワーキング」のコンセプトに基づき、コミュニティーフロア「ラーニング・センター」、デザインシンキングの学習などを支援する「XD Labs」、日本の伝統美に基づく「エンガワ・ヒロマ」などを設けた。社員が自律的に学べる多様な環境を生み出している。

▼ネットワンシステムズ イノベーションセンター(netone valley)(東京・品川、クリエイティブ・オフィス賞)=7階建て倉庫を利活用した物流センターとオフィスが一体化した施設。東西100メートル、南北40メートル、天井高5.5メートルの広大なシームレス空間を人々が行き交い、様々な化学反応を起こす実証実験の場と捉えている。時間によって変化する照明、生木や緑を大量に使用。心地よい環境音楽や自然音も流し、視覚、聴覚、臭覚で体感する空間を築いた。

▼アルプスアルパイン 仙台開発センター(古川)(宮城県大崎市)=1400人が働く、研究社屋を建て替えた4層オフィス。専門分野の異なる技術者同士が吹き抜けを介してつながり、迅速にイノベーションを創出する空間を構成。社名ロゴの特徴「ななめライン」を床や壁、天井デザイン、会議ブースに適用した。空間にスピード感を生み出して動線を意図的に交錯させる設計でコミュニケーション頻度を上げた。

▼エア・ウォーター健都オフィス(大阪府摂津市)=3フロアで3つの目的の場を設け、各活動のサイクルを循環・スパイラルアップさせて新たな健康事業・文化を創造・発信するコンセプト。1階は地域とくらしに溶け込み、新事業・技術の芽を発見する健康事業・技術実証オフィス。2階は市民・パートナーに開かれた健康事業・技術連携コワークオフィス。3階はパートナーと共に新健康事業・技術を深化させるプロジェクトワークオフィス。中央吹き抜けを視線制御設計にし、一般市民の1階への積極誘導と知的資産の堅守を両立させた。

▼エスユーエス 東京オフィス(東京・港)=拡張現実(AR)・仮想現実(VR)関連へと事業拡大を進める技術系人材派遣企業が、社外の「WOW(驚き)」を促し、ブランディングを向上させながら社内エンゲージメントも高めるオフィス。デジタル森林浴ができる待合兼リフレッシュスペースなどDXルームを設置。ワークプレイスは風通しのよいオープン空間で多様なつながりを「見える化」した。社内のWOWを創り出し、社内共創を加速する工夫を凝らしている。

▼オカモトヤライブオフィス palette(パレット)(東京・港)=俳人の鈴木芳如が1912年に東京・虎ノ門で開業し、オフィス空間事業も手掛ける老舗文具店の虎ノ門ヒルズにあるオフィス。「垣根のないオフィス」「個が交ざり合い人と人が刺激しあうワンフロア」をコンセプトにした。「働かない空間」もあるフリーアドレスオフィス。健康経営の一環として、凹凸のある壁面と平らでない床で、靴を脱いで様々な姿勢になれる個室ブースも設けた。

▼ジューテック本社ビル(東京・港)=鉄骨造、緩衝ゾーン、木造の3ブロック構成による都市型多層木造ビルで、港区で初の耐火木造建築物。鉄骨造のワークゾーンと木造のコミュニケーションハブからなる。新橋赤レンガ通りに面した木造部は街や人々に潤いをもたらす外観。執務フロアを結ぶ内部階段を中心に縦横な回遊行動を促すなど、多様性が生き、共に成長するスパイラル・アップ・ワークプレイスを具現化した。

▼第一生命日比谷オフィス(東京・千代田)=マッカーサー記念室を有する歴史的建物を生かしながらリノベーションしたオフィス。建て替えではなくリノベーションを選択し環境負荷を抑え、社会・環境のサステナブル・ウェルビーイング(心身の健康や幸福)を追求した。皇居に面したサードプレイス「LOFFT(ロフト)」は、社内外のワーカーが交流し共創・協創する場。社員と来客の動線を明確に分離するなど、「つながり」と「セキュリティー」の両立も工夫した。

▼ダイビル 新本社オフィス(大阪市)=「Spiral up! あした、もっと行きたくなるオフィス」というコンセプトのもと、創立100周年に合わせて大規模にリニューアルし、ライブオフィスとして運用を始めた。高濃度の酸素でリフレッシュできる酸素ボックス、グリーンな壁や柱で癒やしの空間を創出したグリーン計画、ウォールアートやオブジェを設置したアート計画など、ウェルネスオフィスで快適性とエンゲージメントの向上を促している。

▼日本設計本社オフィス think ++ nexus(東京・港)=超高層ビルに実績のある日本設計が自ら設計したビルの34〜35階。テナントビルでも実現できる魅力的なワークプレイスや知見を社会に発信するオフィス。都市の中の階段広場のような交流空間「みんなの広場」、フロアを周回して都市風景を360度見晴らす「ミチ」空間など、働く場所と時間を自由に選び組み合わせる共有フレックス制にも対応する「都市のようなオフィス」を実現させた。

▼ベイカレント・コンサルティング 麻布台本社オフィス(東京・港)=部門・社員・階層間に心理的・物理的な壁がないボーダーレス、誰にとってもわかりやすく利用しやすいインクルーシブがコンセプト。高付加価値のサービスを提供する上で重要な「ホスピタリティ」に着目。3層をつなぐ大階段、1人で集中して働けるフォーカスカウンター、可動式ホワイトボードスクリーンで多様な打ち合わせに対応するアジャイルエリアなど、まず社員がホスピタリティを体験し、新サービスの創出を目指す工夫を随所に取り込んだ。

▼メニコン シアターAoiビル(名古屋市)=コンタクトレンズのパイオニア企業として、「五感を刺激するオフィス環境づくり」を追求した。新鮮な外気を取り込む「自然換気制御」、どこにいても快適な空調になる「除湿型天井輻射冷暖房」、ハイレゾ音源と間接音による自然界そのままのような空間音響設計、自然光のリズムに合わせて体内時計を安定させるサーカディアン照明、アロマや植栽などで快適な空間を実現するバイオフィリックデザインなど、最先端技術を採用している。

▼森トラストグループ本社オフィス(東京・港)=中核事業の一つであるホテル事業を想起させる空間デザイン。ロビーはフレキシブルなレイアウト変更で各種イベントに対応。執務エリアは壁を廃し、部署間のコミュニケーション増を促す。植栽とアンティーク家具でデザインしたラウンジ、ガラス張りでプレゼンテーションの熱を社内に伝える会議室、個人作業に集中できるフォーカスブースなど、「目的地」と「可変性」のコンセプトを実践している。

▼安川メカトレック末松九機 西日本本社ビル(福岡市)=「集まることで価値を生み出す」「ワーカーが集まりたいと思える、会社にとってのリビングのようなオフィス」という「ネイチャー・リビング」をコンセプトにした。執務空間は水平方向へシームレスにつながる広がりがある。光と風、人の通り道となる吹き抜け空間を設け、生物が自然の中を回遊するように、社員同士が自然に集ってコミュニケーションが生まれる工夫をした。

▼LION本社オフィス(東京・台東)=社員の健康と、そのためのより良い習慣づくりを重視し、多様な属性や立場の社員が「行きたくなるベストオフィス」をテーマにした。新しい習慣のヒントに触れ、気づくことが、未来の習慣をつくるためのアイデアづくりを加速させるという発想。ガラス壁にクレヨンで絵を描ける子連れ勤務専用室、日々姿を変化させる共創フロアなどで、社員の自律性やワクワク感を引き出す。

併設した北海道、東北、中部、近畿、中国、四国、九州・沖縄の各ブロックのニューオフィス推進賞は以下の通り。

北海道=ドーコン本社ビル(札幌市)、北斗工機 本社オフィス(同、北海道経済産業局長賞)

東北=アルプスアルパイン 仙台開発センター(古川)(宮城県大崎市、東北経済産業局長賞)、フォーバル きづなPARK TX(仙台市)

中部=側島製罐 本社オフィス(愛知県海部郡大治町)、ダイコク電機本社ビル6階 ROCCO コミュニケーションスペース(名古屋市)、丸天産業 本社オフィス(同)、メニコン シアターAoiビル(同、中部経済産業局長賞)

近畿=IIS/IIK堺新事務所(堺市)、エア・ウォーター健都オフィス(大阪府摂津市)、ダイキン工業本社オフィス(大阪市)、大成建設関西支店ビル グリーンリニューアル(同)、ダイビル 新本社オフィス(同、近畿経済産業局長賞)、日建設計コンストラクション・マネジメント O3(大阪おせっかいオフィス)(同)

中国=中電工業 本社・広島営業所オフィス(広島市)、ナカシマグループ NXビル(岡山市、中国経済産業局長賞)

四国=フクヤ建設社屋(高知市、四国経済産業局長賞)

九州・沖縄=OEC大分本社ビル 未来の杜 Play Field(大分市)、安川メカトレック末松九機 西日本本社ビル(福岡市、九州経済産業局長賞)

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