ベンチャーキャピタル(VC)の環境エネルギー投資(東京・品川)は、高性能な送配電ケーブルの開発を手掛ける米国のスタートアップ、TS Conductor(ティーエス・コンダクター、米カリフォルニア州)に出資した。米国では送配電ネットワーク性能を向上させる技術として同社への投資熱が高まっており、ジェイソン・フアン最高経営責任者(CEO)は日本進出の意向も示している。
環境エネルギー投資も含め、ティーエス社はビル・ゲイツ氏設立の事業会社の傘下にあるブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ(BEV)や米資産運用会社のウェリントン・マネジメントなどから総額6000万ドル(約90億円)を調達した。日本のVCがティーエス社に投資するのは初めて。
ティーエス社は既存の送配電線容量の2〜3倍の性能があるケーブルを開発した。軽量で耐久性に優れ、既存の鉄塔などにそのまま設置できるため設備投資コストも抑えられる。すでに米電力会社のネクステラ・エナジーやテネシー川流域開発公社(TVA)など複数の大手電力会社から受注を受けているという。
ティーエス社は2018年設立。材料工学の博士号を持つフアン氏らが長年研究を重ねてきた合成材料や送配電ケーブルに関する知見が強みだ。今回の調達資金を活用して開発拠点を増やしてケーブルの生産規模を10倍に拡大する。
人工知能(AI)や電気自動車(EV)の普及に加え、再生可能エネルギーの活用増加などで電力の消費が急速に増える中、電力を発電施設から工場や住宅などまで運ぶ送配電線ネットワークの不足が課題となっている。
環境エネルギー投資は日本でもティーエス社の送配電ケーブルの引き合いが強まるとみる。フアンCEOは「送電網の容量不足が再エネなどの活用のボトルネックだ。気候変動の問題は急速に激化しており待ったなし。当社の製品を日本の電力会社にできるだけ早く導入するため、日本で製造パートナーを探したい」と意気込む。
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