手作業で鉱脈を掘り進めた世界最大の金の生産地

ユネスコは2024年7月27日、インドのニューデリーで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会で、日本が推薦した「佐渡島の金山」の世界文化遺産登録を決定した。

佐渡金山遺跡は、江戸時代に幕府が管理した西三川砂金山、相川鶴子(あいかわつるし)金銀山の2つの資産で構成される。伝統的な手工業による国内最大の露天掘り跡で、1989年まで約400年にわたって採掘が続いた。


人形で当時の採掘作業を再現している佐渡金山の宗太夫坑(PIXTA)

当初、2023年の登録を目指して政府が22年に推薦したが、記述の不備をユネスコから指摘されて断念。修正を加え、23年1月に再提出した。

ユネスコの諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)は6月、佐渡金山に関し「登録」に次ぐ「情報照会」を勧告。イコモスは、江戸時代より後の遺構が多い地区の除外などの要請に加え、戦時中も含め金山全体の歴史を説明する施設を整えるべきだとする「追加的勧告」を出した。

同金山では、太平洋戦争中に朝鮮半島の人が徴用されて働いていたため、韓国は「強制労働」があったとして世界遺産登録に反対していた。韓国の立場を尊重するイコモスの勧告に日本が従うことで、容認に転じた。


宗太夫坑内部(PIXTA)

2021年に登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」(北海道、青森県など)に続き21件目。自然遺産を含む世界遺産は26件となった。

世界遺産の対象からは外れたが、昭和初期の金生産最盛期を支えた「北沢浮遊選鉱場」は、採掘した鉱石の選別工程を担う拠点だった。1952年に廃止された遺構をツタや雑草が覆い幻想的な雰囲気を醸し出している。スタジオジブリの『天空の城ラピュタ』の世界観を彷彿させる“佐渡のラピュタ”として人気の観光スポットになってる。


昭和初期の金生産を支えた北沢浮遊選鉱場跡。“佐渡のラピュタ” として多くの観光客が訪れる (PIXTA)

日本のユネスコ世界遺産  (*は自然遺産)

登録順 登録対象 登録時期
1 法隆寺地域の仏教建造物(奈良県) 1993年12月
2 姫路城(兵庫県) 1993年12月
3 屋久島(鹿児島県)* 1993年12月
4 白神山地(青森県、秋田県)* 1993年12月
5 古都京都の文化財(京都府、滋賀県) 1994年12月
6 白川郷・五箇山の合掌造り集落(岐阜県、富山県) 1995年12月
7 原爆ドーム(広島県) 1996年12月
8 厳島神社(広島県) 1996年12月
9 古都奈良の文化財(奈良県) 1998年12月
10 日光の社寺(栃木県) 1999年12月
11 琉球王国のグスクおよび関連遺産群(沖縄県) 2000年12月
12 紀伊山地の霊場と参詣道(奈良県、和歌山県、三重県) 2004年7月
13 知床(北海道)* 2005年7月
14 石見銀山遺跡とその文化的景観(島根県) 2007年6月
15 平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群(岩手県) 2011年6月
16 小笠原諸島(東京都)* 2011年6月
17 富士山-信仰の対象と芸術の源泉(山梨県、静岡県) 2013年6月
18 富岡製糸場と絹産業遺産群(群馬県) 2014年6月
19 明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県、山口県、岩手県、静岡県) 2015年7月
20 ル・コルビュジエの建築作品-近代建築への顕著な貢献-(国立西洋美術館=東京都) 2016年7月
21 「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群(福岡県) 2017年7月
22 長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(長崎県、熊本県) 2018年6月
23 百舌鳥・古市古墳群(大阪府) 2019年7月
24 奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島(鹿児島県、沖縄県)* 2021年7月
25 北海道・北東北の縄文遺跡群(北海道、青森県、岩手県、秋田県) 2021年7月
26 佐渡島の金山(新潟県) 2024年7月

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