最低賃金(最賃) パートやアルバイトを含む原則全ての労働者に払われる賃金の下限。最賃法に基づいて時給で示され、毎年度改定される。最賃未満で働かせた企業と経営者には罰金が科せられる。中央審議会の目安を参考に各都道府県の審議会が議論した上で、各地の労働局長が引き上げ額を決める。新しい最賃額は10月以降に適用する。
◆経営者側「中小企業に配慮を」
目安は、経済状況に応じて都道府県をAーCの3区分で示す。Aは東京都など6都府県、Bは栃木県など28道府県、Cは岩手県など13県。審議の結果A、B、Cのいずれも50円だった。 審議で、労働者側の委員は「物価高で最低賃金近傍の仲間の暮らしは苦しくなっている」として大幅な引き上げを主張。B、Cランクを中心に現行の最賃額から67円引き上げ、既に1000円を超えている8都府県を含めて全国で半分の23都道府県が1000円以上となるよう要求した。 これに対し経営者側の委員は「中小企業に支払い能力を超えた過度な引き上げによる負担を負わせない配慮を」と述べ、慎重な姿勢を示していた。 最賃を巡っては、安倍政権下だった2016年度からほぼ毎年、3%超の引き上げが続いた。最賃に近い水準の賃金で働く人の賃上げにつながるため、重要性が増している。岸田文雄首相は30年代半ばまでに1500円を目指す目標を前倒しする考えを示している。 ◇◆諸外国に比べまだまだ、原資確保が困難な企業も
最賃は目安通り引き上げられれば、全国加重平均で時給1054円(前年度比5%増)となる。だが先進各国と比べて水準は低く、生活を支える金額としては十分とは言えない。これから本格化する各地の審議会の議論で、都市部と地方との格差解消がどれだけ進むかも課題となる。 2024年度の目安について浜銀総研の遠藤裕基氏は「物価上昇に負けない引き上げとなった。(春闘での)正社員らフルタイムのベースアップを上回っており、正規と非正規との格差を縮める方向性から引き上げ率は妥当」と評価した。 ただ内閣府によると、フルタイム労働者の賃金中央値に対する最賃の比率は2022年で、欧州各国や韓国が52.6〜60.9%に達するのに対し、日本は45.6%にとどまる。 「最賃ではまともに食べていけない。フルタイムで働いても年間200万円に届くかどうかだ。ワーキングプアを作るだけの水準」。審議会の委員として参加していない全国労働組合総連合の黒沢幸一事務局長は23日、厚労省前で組合員ら約30人と声を上げ、最賃を1500円以上とするよう訴えた。厚生労働省
今後、順調に引き上げが続くかも不透明だ。目安の審議で経営側の委員は、人件費や高騰する原材料費を価格転嫁できていない企業が多いとして「(最賃引き上げの)原資の確保が困難な状況」と主張。中小企業の支払い能力を高める環境整備や支援策を求めた。 一方で労働側の委員が訴えた問題は、地域間の格差だ。最賃額が低い地方から高い都市部へと労働力が流出しているとして、地方を底上げして格差の縮小を目指す考えを強調していた。 2023年度は、実際の最賃額を議論する各地の審議会で、中央審議会の目安を上回る答申が続出した。佐賀県は8円を上乗せするなど24県で目安を超えて引き上げた。2024年度も、地方の審議会で再び目安を上回る答申が相次ぐかが注目される。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。