最低賃金は企業が労働者に最低限支払わなければならない賃金で、現在の時給は全国平均で1004円です。

24日、労使双方が参加した審議会で最終盤の議論が行われていましたが、時給で50円、率にして5%引き上げる目安で決着し、全国平均は時給1054円となることが関係者への取材でわかりました。

物価高が続いていることや春闘で高い水準の賃上げが広がっていることなどを踏まえ、去年の43円を超えて過去最大の引き上げとなりました。

これまでの議論で労働者側は物価高で生活の厳しさが増しているなどとして大幅な引き上げを求めたのに対し、企業側は中小零細企業では価格転嫁が十分にできていないなどとして慎重な姿勢を示していました。

政府は最低賃金を2030年代半ばまでに1500円に引き上げることを目標に掲げています。

今後、24日に決着した目安をもとに各都道府県ごとの審議会で労使の話し合いが行われ、来月には各地の最低賃金が決まり、10月以降、順次適用される予定です。

飲食店 従業員は歓迎も店主は影響懸念

今年度の最低賃金の目安が過去最大で決着したことについて、飲食店の従業員からは歓迎の声が聞かれる一方で、店主からは経営への影響を懸念する声が聞かれました。

東京・新宿の飲食店ではアルバイトを12人雇っていますが、最低賃金の引き上げに合わせて毎年、時給を上げていて、いまは東京都の最低賃金より高い1150円を下限に設定しています。

最低賃金が50円引き上がる目安で決着したことについて、大学2年生のアルバイトの女性は「物価も上がっていて大変なので時給が上がることはうれしいです。海外に留学したいのでその費用にあてたいです」と話していました。

一方、店側は経営への負担が増すのではないかと懸念しています。

この店では光熱費の負担が増えているうえ、肉や酒などの仕入れ値が去年からでも1割ほど高くなっています。

さらに今回の最低賃金の引き上げで人件費が年間で数十万円上がると想定され、いわゆる「年収の壁」に伴う人手不足の対応にも新たな費用が必要になるということです。

店では、仕入れ業者を選び直してコスト削減の努力をしたり、接客を充実させて客単価をあげることでカバーしていきたいと考えています。

飲食店「和創作 空」の門倉和幸店長は「従業員も収入を得るために働いているので時給が上がることはいいことなのですが、雇っている側としてはどうやりくりするか不安なのが正直なところです。客へのおもてなしをして店全体として売り上げ上がるよう取り組みたい」と話していました。

専門家「生活の下支え効果期待」

今年度の最低賃金の目安が過去最大で決着したことについて、大和総研の田村統久エコノミストは「賃上げの機運が広がる一方でそこから取り残された人もいる中で、今回の最低賃金の引き上げは低賃金の労働者が物価が高まる中でも生活水準を下げないようにする下支え効果が期待できる」と指摘しました。

一方で「積極的に最低賃金を引き上げたときに企業の人件費の負担が大きく懸念され、企業には生産性の向上や価格転嫁を進めていくことが求められる。価格転嫁については個々の企業でできることは限られるので、しっかりと政府が音頭をとって支援していくが必要だ」と話していました。

今後、都道府県ごとに議論される最低賃金については「比較的、最低賃金を引き上げやすい地域はしっかりと引き上げていくことが大事だ。一方で賃金が上がった結果として雇用が失われてしまっては本末転倒で、雇用情勢や経済実態に即した引き上げを行うことが大事になってくる」と話していました。

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