日経リスクインサイトが4月8日に創刊してから、約1カ月が立ちました。このわずかな間にも、企業不正や不祥事のニュースが相次いでいます。
3月下旬に公表された小林製薬の「紅麹」問題は原因究明が続いており、会社側の一連の対応が適切だったか検証する作業も始まっています。4月24日には、IHIの子会社が船舶用ディーゼルエンジンの試験データを長年にわたり改ざんしていたことが発覚しました。製造業でのデータ改ざんのニュースには、驚きよりも「またか」という印象が先にきます。
こちらも今後、外部有識者による特別委員会が原因究明や再発防止策の策定に取り掛かる見通しです。その際にぜひ注目してほしいのは、「なぜ起きたか」を探るだけでなく、「なぜ今まで発覚しなかったのか」という観点での掘り下げも極めて重要になるということです。
4月18日にリスクインサイトで配信した「企業不正の研究 トヨタグループの品質不正分析」で深水大輔弁護士も指摘している点ですが、品質不正・検査不正がなくならない背景として製造現場の閉鎖性の問題が多くみられます。有効な再発防止策を打ち出すためには、小さな不正やルール違反が現場で見過ごされず、着実に社内で報告されるように促す仕組み作りが欠かせません。
例えば、不正を発見して改善につなげた管理職は人事評価を高くしてボーナスも上げ、逆に発見できなかったり結果的に放置してしまったりすれば事後的にマイナス評価にするなどの制度が考えられます。
ただ実際には、企業不正・不祥事の外部調査委員会の報告書や、企業側の再発防止策で、そこまで踏み込んだ具体策が示されることはそう多くありません。一見もっともらしくても、よく読むと「コンプライアンス意識の向上」や「企業風土の改革」などのお決まりの言葉が並ぶだけの、実効性に不安が残るような例もあります。
改善に向けた具体的な仕組みを伴わなければ、同じような不正が繰り返されるリスクは残ります。そして消費者や投資家、取引先などの目も、徐々に厳しくなっています。中途半端な調査報告書や再発防止策では、その企業の立て直しに役立つどころか、対外的な信用をさらに落とす結果を招くこともあります。
5月の日経リスクインサイトでは、「企業不祥事の研究」として、宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)の俳優の女性が上級生や劇団幹部らによるパワーハラスメントなどを受けたうえ、死亡した問題を取り上げます。この件はまさに当初の調査報告書の内容が不十分だったため、歌劇団や歌劇団を傘下に置いている阪急阪神ホールディングスへの大きな批判につながった「悪いお手本」といえます。
企業の不正対応などに詳しい浅見隆行弁護士に、一連の対応のどこに問題があったのかなどの課題を分析してもらいます。
5月の特集は「『もしトラ』を考える」です。11月5日の米大統領選まで残り半年になり、民主党のバイデン大統領と共和党のトランプ前大統領が争う構図となっていますが、企業関係者の中では「もしもトランプ氏が再選したら」に備えようとする動きがみられます。
再び「トランプ大統領」が生まれたら、米国の政策はどう動くのか。通商政策や投資規制、ESGへの対応、米中関係への影響など、様々な観点からの分析記事をお届けします。もちろん現段階で選挙戦の行方を予想することは困難ですが、日本企業として想定すべきシナリオや、今から備えられるポイントを探ります。記事の筆者として、国内外の専門家に担当していただきました。
その他、テーマ外のトピックとして企業のハラスメント対応のあり方を考える記事も配信する予定です。各記事は先月同様、火曜日と木曜日の午前11時30分を原則として配信します。状況に応じ、他の曜日にも記事をお届けすることがありますので、チェックしていただけると幸いです。
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(2024年5月2日、編集・植松正史 masafumi.uematsu@nex.nikkei.com)
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