記者会見に臨んだ日本ハムの井川社長(左から2番目)とJA全農の桑田代表理事専務(右から2番目)(9日、東京都千代田区)

日本ハムと全国農業協同組合連合会(JA全農)は9日、畜産分野における包括的な連携協定を結んだと発表した。畜産技術の研究や共同配送、加工場の相互利用などを進める。原燃料高や人手不足など事業環境が厳しくなる中、協力して課題解決に取り組む。

同日、都内で開いた記者会見で日本ハムの井川伸久社長は「JA全農の充実したバリューチェーンと、日本ハムの持つ生産技術や販売力を掛け合わせる」と説明した。JA全農の桑田義文・代表理事専務は「消費者側の日本ハムと生産者側に立つ全農の提携は大きな意義を持つ」と期待感をにじませた。

9月以降に全農系の食肉加工工場で日本ハムのロースハム製品を製造する。このほか豚の発情期を人工知能(AI)を使って検知する日本ハムの技術を畜産農家に導入する。日本産品の海外輸出についても協力する。

取り組みの詳細を詰めるため、役員級が参加する協議会を組織した上で、推進事務局を設置する。事務局にはテーマごとの分科会を置き、定期的な情報共有と議論の場にする考えだ。2者以外の参加の可能性について、桑田代表理事専務は「テーマによって他社が一緒に取り組むことは排除しない」と話した。

連携の背景について、井川社長は「食肉業界を取り巻く課題は人手不足やコスト高、物流問題など多岐にわたり、年々厳しくなっている」として生産や配送、販売などの効率化に連携して取り組む必要があると強調した。桑田代表理事専務も「単なるコスト削減だけではなく、自給率向上や脱炭素社会にも貢献するものだ」と意義を訴えた。

日本ハムは今回の連携について「2025年3月期の業績に与える影響は軽微」としながらも「中長期的には当社の業績および企業価値の向上に資する」と説明している。

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