日本銀行本店

 日銀が1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)は、景況感を示す業況判断指数(DI)のうち代表的指標の大企業製造業は前回調査(2024年3月)から2ポイント改善のプラス13となり、小幅ながら2期ぶりに改善した。  認証不正問題があったダイハツ工業の自動車生産停止の影響が和らいだほか、幅広い業種で価格転嫁が進み業績が改善した。  大企業非製造業のDIは1ポイント下落のプラス33で、16期ぶりの悪化。原材料高やエネルギー価格上昇への懸念が全産業から示されたほか、インバウンド(訪日客)需要の持続性への不安も広がった。  中小企業製造業のDIはマイナス1で前期比横ばい。原材料などのコスト高を懸念する声が根強かった。中小企業非製造業のDIは前期比1ポイント下落のプラス12で2期連続の悪化となった。(石川智規) <記者解説>コスト増加分を価格転嫁できず
 1日に日銀が公表した短観は、価格転嫁が進む大企業の製造業の景況感は2期ぶりに改善したが、中小企業は横ばいでマイナスが続いた。円安の恩恵を受けにくい企業の中では、材料費のコスト高に加え、人手不足や賃上げへの圧力などの三重苦を理由に、廃業を迫られる中小企業も出ている。(白山泉)  繊維や業務用機械などで景況感が上昇し、日銀は「価格転嫁の進展を背景に、素材産業を中心に景況感が強まった」と説明する。大企業を中心に製造業の設備投資意欲も強い。  一方、1ドル=160円台を突破する円安に危機感を特に強めるのが、中小企業だ。都内の町工場経営者は「材料価格が2倍に上がっている。ガソリン代の上昇も厳しく、円安の恩恵のある会社はそれほど多くない印象だ」と話す。  東京商工リサーチが6月に行ったアンケートでは、製造業が期待する為替レートは1ドル=130円。足元の約160円の水準とは乖離する。  材料費や人件費の増加分を価格転嫁しようにも、実質賃金が増えずに消費者心理が冷え込む中、交渉力の弱い中小はさらなる値上げが難しい。円安による明暗の二極化が進む中、政府が目指す「賃金と物価の好循環」から取り残される企業が増える懸念が強まっている。 

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