全日本空輸と日本航空は28日、顧客による迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」について、共同で対応方針を策定したと発表した。カスハラには「毅然(きぜん)と行動し、組織的に対応する」と明記。航空大手2社が共同で明確な定義や行為例を打ち出すことで、質の高いサービスを維持しつつ従業員保護につなげる。

対応方針ではカスハラについて、顧客としての優越的な立場を利用した法に反する行為や、社会通念上相当な範囲を超える対応の要求などによって「従業員の就業環境が害されること」と定義した。「過剰な要求」「暴行」「セクシュアルハラスメント」などカスハラに該当する行為例を明示。実際に迷惑行為に発展した場合は複数人で対応するなど、両社それぞれが作成したマニュアルにのっとって対応する。

両社によると、コールセンターや空港、機内などで迷惑行為が報告されており、2023年度に両グループで確認されたカスハラはそれぞれ約300件に上った。具体的には、機内で欲しい飲み物と違ったとしてコップを投げつけたり、電話で「バカ、無能だな」などと怒鳴り声を上げたりする事例が確認されたという。

これまでは明確な基準がなかったため、従業員が判断に迷うなど現場に負担がかかっていた。休職に追い込まれる例もあり、「会社としても強い危機感を感じている」(全日空の宮下佳子CS推進部長)という。両社は今後、業界各社などと連携し、カスハラへの対応強化を目指す。

◇カスハラに該当する行為例

【暴言、差別発言など】

能力を否定する侮辱的な発言

【脅威を感じさせる言動】

「殴ってやる」「殺すぞ」など脅迫的な発言

【過剰な要求】

理不尽な理由で慰謝料など金銭を要求

【暴行】

社員を殴るなどの暴力行為

【業務に支障を及ぼす行為】

居座り、長時間の電話

【業務スペースへの立ち入り】

事務所などへの押し入り

【社員を欺く行為】

不正に発券された搭乗券の利用

【会社・社員の信用を毀損(きそん)させる行為】

誹謗(ひぼう)中傷のSNS投稿

【セクシュアルハラスメント】

性的な言動。

カスタマーハラスメントへの対応方針を共同で策定した全日本空輸の宮下佳子CS推進部長(左)と日本航空の上辻理香CX推進部長=28日午後、東京都港区

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