京成電鉄は27日、千葉市内で定時株主総会を開催した。英ファンドのパリサー・キャピタルは京成が保有するオリエンタルランド(OLC)株の一部売却を求める株主提案をしていたが、否決された。パリサーは引き続き京成株の保有を続ける意向を示している。
「株主提案に賛成の人は挙手をしてください」。京成電鉄の株主総会で小林敏也社長はパリサーの株主提案を採決にかけた。会場に集まった株主254人のうち手を挙げたのは数えるほどだった。インターネットなどによる事前の議決権行使も踏まえ、株主提案は否決された。
小林社長は「取締役会は(パリサーの)株主提案に反対をしている」と改めて立場を表明した。
午前10時に京成ホテルミラマーレ(千葉市中央区)で開会した。決算説明の後、15人の株主から質問や意見が出て午前11時55分ごろに終了した。
パリサーは2021年から京成への出資を始め、現在は2%弱を保有している。23年10月から、OLC株の持ち分比率を6%ほど下げて議決権総数の15%未満とする京成への要求を対外的に公表した。
京成は持ち分法適用会社として保有するOLC株を簿価約2000億円で評価している。一方、パリサーはOLC株は時価換算で約1兆600億円の価値があるとし、会計上のゆがみを指摘。一部売却で得られる現金を鉄道事業の強化や沿線開発など成長投資に充てるよう求めている。
京成は3月に、OLCの発行済み株式(自己株式除く)の1%分を売却すると発表し、700億円強を24年3月期に特別利益として計上した。パリサーは1%の削減は「不十分」として更なる売却を求めていた。株主からは「今後もOLC株の売却はあるのか」や「売却した資金の用途は何だったのか」と言った質問が上がった。
京成株を50年以上保有しているという東京都葛飾区の小出一成さん(80)は「(OLC)株は売らないほうがよい。経営も順調で売る理由もない」と話す。千葉市稲毛区に暮らす50代の女性会社員は「OLCの業績は上がっているので、京成はその恩恵に預かれる」とパリサーの株主提案に反対した。
一方、群馬県在住で個人株主の橋本貴行さん(60)はパリサーに賛成の考えを示した。「OLC株の更なる売却は企業価値向上につながる」とした上で「京成の経営陣にとってOLC株は『虎の子』だろうが、1%だけ売るといった中途半端なことはしないでほしい」と語った。「ファンドが提案する成長投資は沿線住民としてはありがたい」との声も一部で聞かれた。
パリサーは総会前に日本経済新聞の取材に応じ、創業者のジェームズ・スミス氏は「(京成の)長期的な成功にコミットし続ける」として、株主提案が否決されても京成株の保有を続ける意向を示していた。
JPモルガン証券シニアアナリストの姫野良太氏は、京成の取締役会の反対について「今後の投資規模や金額を示した上でというなら分かるが、ただ反対するだけでは投資家の理解を得るには不十分。納得性は乏しい」とみる。
もっとも、姫野氏はパリサーの成長投資に向けた提案についても「事例を列挙しただけに過ぎず、京成にとって成長投資の機会になるのかは分からない」と説明。今後のOLC株売却については「来期から始まる中期経営計画で空港線強化の投資などに沿う形で株式売却の可能性が出るのでは」と語った。
パリサーは株主総会に向け、株主の意見を聞くために投票の機会をつくるよう法的拘束力のない勧告的決議を議案として提出した。京成側が議題として取り上げることを拒否したため、OLC株の売却計画を定款に追加するよう求めた。
米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)とグラス・ルイスはパリサーに賛成するよう推奨していた。
京成の取締役会は「OLC株は中長期的な企業価値向上のために必要な原資」として、招集通知で株主の賛同を求めていた。
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