アクティビストを含む株主提案 過去最多に

株主総会の時期を迎えた。

ことしも上場企業に積極的に経営改革を促すアクティビストの動きが活発だ。

アクティビストを含む株主提案の数はことし過去最多となった。

国内勢の代表格として知られ、例年、数多くの株主提案を行うファンドの経営者が丸木強氏だ。

野村証券勤務を経て、村上世彰氏が率いたM&Aコンサルティングなど“村上ファンド”の創業メンバーとして活動。

2012年にアクティビストファンド「ストラテジックキャピタル」を設立し、中堅企業を中心に投資活動を続けている。

丸木強氏
「投資先は今12、3社なんですが、1社あたり年に7、8回会うんですよ。年に100回くらいミーティングするんですよね、だから2.5営業日に1回はやってるわけですよね、それの準備、そこで何を質問するのか、どういう意見を伝えるのか、っていうことに結構時間を使ってます」

そう語る丸木氏が、ことしの株主総会で株主提案を出したのは9社だ。

ダイドーリミテッドのHPより

このうち株式のおよそ3割を保有し、「ニューヨーカー」などのブランドを展開する東京のアパレル企業、「ダイドーリミテッド」に対しては、長期にわたる経営不振を理由に経営陣の刷新を要求。

新たな取締役6人の選任を提案した。

これに対して会社側は、「株主提案の取締役候補者で構成される経営体制には業績回復と持続的な企業価値向上のための具体的な経営計画が存在しない」と反論。

現経営陣は退任し、外部のコンサルティング会社代表などを新たな候補とする会社提案を発表していて、どちらがふさわしいのか、両者の主張は鋭く対立している。

また、大阪の鉄鋼メーカー、淀川製鋼所に対しては、株価が低迷しPBR=株価純資産倍率1倍割れが常態化しているとして、改善に向けた経営計画の策定や株主還元の強化を提案。

一方、会社側は、「提案は中長期的な成長投資などの必要性を考慮せず、短期的な株主還元で自己資本を圧縮させ、形式的に利益率を改善させることを企図していて、企業価値、株主の利益向上に貢献しない」として反対することを決議した。

株主提案をした企業のうち、すでに総会が終わった3社では提案は否決されている。

2000年代の「モノ言う株主」

かつても今も経営者と厳しく向き合っているように見える丸木氏。

2000年代、自ら中心メンバーとして活動していた村上ファンドなど「モノ言う株主」とも呼ばれた投資家は、株価が割安な企業の株式を一気に取得して大株主となり、経営陣に利益還元などの要求を次々に突きつけ、日本社会に衝撃を与えた。

村上世彰氏(2006年6月)

丸木氏は当時の経営者に次のような印象を持っていたという。

丸木強氏
「日本の企業経営者のマインドがすごく、内向きだったと思います。株主が期待する以上のリターンを上げようという意識が非常に薄かったのではないかと。確かにバブルが崩壊してしまって、気持ちがシュリンクしてしまったということはあると思いますが、あまりにもそれが長く続きすぎてしまった」

ただ、モノ言う株主をめぐっては、投資手法が強引だとか、短期的な利益だけを目的にしているといった批判も相次いだ。

刑事事件に発展したケースもあった。

丸木強氏
「アクティビストが言うことが、自分たちの金儲けばかり考えやがってという印象が強かったんじゃないですかね。我々が株主ですと言って会いにいくと、社長に会えなくてもせめて財務担当の取締役に会いたいじゃないですか。それが総会屋担当が出てくる、そういう時代が2000年代前半はありましたね。世の中の風潮は感じていたんですが、俺たちは正しいことをやっているんだというのが強かったと思います。正しいことをやっているんだから嫌われてもしょうがない、俺たちが正しいんだということでやってたんじゃないか」

経営者も株主も変わるのか

一方で、その後、向けられる視線や企業の対応は徐々に変わり始めているという。

「スチュワードシップ・コード(2014年)」や「コーポレートガバナンス・コード(2015)」の策定などにより、アクティビストの活動への理解が一定程度、進んだのが背景だという。

去年、東京証券取引所も上場企業に対して「資本コストと株価を意識した経営」を要請した。

経営者と投資家との関係について、丸木氏に尋ねると、次のように答えた。

丸木強氏
「株主総会に行って色々意見を言うんですけど、昔はね、本当にアウェーな雰囲気、自分だけ孤立して、みんな経営者の味方みたいな雰囲気があったのが、最近ちょっと変わってきて、私と同じような質問をする個人株主が増えてきたと思います。投資家も少しずつ変わっていくし、経営者も少しずつ変わっていくというところで、ちょっと時間がかかってしまうかもしれませんが変わっていけばいいなと思いますね」

「株式会社は営利事業を行うために資本を調達しなきゃいけないが、株主はリターンが出るから資本を出すわけです。儲からないんだったら株主として資本は出しませんよという循環に陥ってしまうと、産業として投資ができなくなってしまう。株の価値が上がればもちろん年金の運用も投資信託も、個別株を買っている人でも資産が増えて、それを投資に回すか消費に回すか、そういう循環に入るわけですから、株主価値を高めないといけない、それで資本主義は回っていくということだと思うんです」

東京証券取引所を拠点に株式市場を取材していると、国や東証の対応も相まって、株価・株主を重視する雰囲気が強まっていることを日々感じる。

実際、アクティビストの提案を受け入れて経営改革を進めている企業もある。

大和総研の鈴木裕 主席研究員は次のように指摘している。

大和総研 鈴木裕 主席研究員
「アクティビストはかつては必要悪とも呼ばれ、企業からみれば煙たい存在であることに今も変わりはないが、提案の内容が精緻なものになり、経営が見過ごしていたり、あえて目を背けていたりする問題を明らかにする補完的な役割を果たすようになってきている。株価の向上と配当で投資家に報いつつ、社会的な役割である雇用の確保なども両立するため、企業には持続的な成長に向けてバランスよく対応を進めることが求められる」

アクティビストの提案はすべてが評価されるような内容ではなく、株主だけを見て社員や顧客をないがしろにすれば会社は利益を生み出せなくなるという指摘もある。

経営者と投資家との関係は、今後、どうなっていくのだろうか。

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