7月3日の新紙幣発行を前に、財務省と国立印刷局は19日、東京・北区の国立印刷局東京工場で新紙幣の製造工程を報道陣に公開した。図柄の印刷やお札サイズへの断裁のほか、紙幣への採用が世界初となる新たな3Dホログラムなどを紹介。担当者は「改刷への機運醸成につながれば」とPRした。

図柄が印刷されていく新紙幣=東京都北区の国立印刷局東京工場で

 インキの香りが充満する工場内では、さまざまな機械が音を立てて稼働。1000円札20枚分が印刷された一枚紙の「大判用紙」が絶え間なく機械に流れ込むと、微生物学者の北里柴三郎の肖像画が次々と印刷されていく。その後、紙幣を傾けると色や模様が変化して見えるホログラムが貼り付けられ、断裁工程を経て紙幣の束が生まれた。

◆偽造防止やユニバーサルデザイン意識

 新紙幣に用いられる3Dホログラムは、見る角度に合わせてデザインされた渋沢栄一(1万円札)や津田梅子(5000円札)らの肖像の向きが変化して見える仕様で、紙幣への採用は世界初。また、ユニバーサルデザインの観点から数字の形などに視覚や触覚を考慮した工夫もさまざま施されている。(高田みのり)

紙幣を傾けたり、光の当たり方で見え方が変わる3Dホログラムの肖像

◆肖像画が左右に回って見える新技術、テープを貼り付け

新しく発行される(上から)10000円、5000円、1000円の新紙幣サンプル=東京都北区の国立印刷局東京工場で

 国立印刷局東京工場(東京都北区)の報道公開では、大判用紙に図柄を印刷してから、切り分けて1枚のお札が完成するまでの工程を見学できた。  新たな紙幣は、「近代日本医学の父」と呼ばれる北里柴三郎が肖像画になった1000円札、津田塾大学創設者の津田梅子の5000円札、日本経済の基礎を築いた渋沢栄一の1万円札の3種類。  最初に公開されたのは1000円札の印刷現場だ。浮世絵師・葛飾北斎の「富嶽三十六景」が描かれた裏面20枚分が大判の紙1枚にまとめて刷られた後、北里柴三郎の肖像画が描かれた表面を印刷する機械に次々と流されていった。

3Dホログラムが貼り付けられた新紙幣=東京都北区の国立印刷局東京工場で

 続いて、偽造防止のため採用された新たな「3Dホログラム」の貼り付け工程を見た。お札を傾けると各紙幣のホログラム上に描かれた肖像画が左右に動いて見える。図柄そのものが浮かんで見える「3D」自体は現行の紙幣でも採用されているが、肖像画が左右に回って見える技術をお札に採用したのは世界初という。これらホログラムはテープ状になっており、機械でガシャンガシャンと1万円札20枚分に一気に貼り付けられていった。

◆1億円分の1万円札を一気にカット

 最後に公開されたのは、大判用紙から1枚の紙幣に切り出す「断裁」の工程。ここでは1万円札を扱っていた。重ねられた大判用紙500枚は計1億円分。それを機械で細かく振動させて紙の四隅をきっちりそろえた後、断裁機がキュイーンと高音を出しながら一気に切り分けた。  切り出されたお札は1束500万円。その束を担当者が手でさばき、プラスチック製のケースに収めていった。完成した紙幣は検査後に日銀に納められる。(山田晃史) 

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