日銀は13~14日に開いた金融政策決定会合で、大規模な金融緩和の一環で行っている国債買い入れ額を減額することを決定した。
 国債の最大の買い手である日銀が購入額を減額すれば国債価格は下落、長期金利は上昇しやすくなる。米国との金利差がわずかに縮まり、円安に一定の歯止めがかかる可能性がある。政策金利(無担保コール翌日物)は0~0.1%で維持した。(石川智規)

日本銀行本店

◆買えば買うほど金利低下

 日銀はこれまで、金融緩和策の一つとして国債を月間6兆円程度を買い入れていた。日銀が保有する国債残高(6月10日現在)は584兆円。今回の決定で金融緩和の「量」が減ることになる。次回7月の決定会合で減額幅などの具体的な計画を決定する。  日銀が国債を買えば買うほど額面価格が上がり、利回りは下がる。これによって長期金利も低下する。逆に、購入量を減らせば国債価格は下落、長期金利は上昇に向かう。日本の金利が上がれば米国との金利差が縮まるとの思惑から、金融市場では円を買ってドルを売る円高方向に向かいやすくなる。日銀としては、物価などに影響を与える円安を少しでも緩めたい狙いもあるとみられる。

◆膨らむ保有残高

 そもそも、日銀が国債を大量に購入してきた背景には、国債を買って市中に大量にお金を供給(量的金融緩和)し、景気を下支えする狙いがあった。  これら大規模な金融緩和策は、黒田東彦・前日銀総裁が「異次元の緩和」として推し進めてきた。長期金利が低下すれば企業向けの融資や住宅ローンの固定金利が下がることが見込まれ、民間側がお金を借りて投資や消費を活発化させ景気の浮揚につながる効果が期待できる。  だが国債に関しては、日本の発行残高のうち5割超を日銀が持っている状態となっている。他国を見渡すと、米連邦準備理事会(FRB)は2割弱にとどまっており、日銀の保有残高は異常なまでに膨らんでいるといえる。  現在の植田和男総裁は3月にマイナス金利を解除し、17年ぶりに利上げに踏み切った。今回、国債の購入額を減らし、保有残高も徐々に減らすことで、「市場をゆがめた」との批判がある大規模な金融緩和策を転換し、金融政策を平時の姿に戻す作業を進めたい考えだ。

◆これからどうなる?

 金融政策の正常化の一環として行う国債買い入れの減額。だが、長期金利が上昇すると、景気は冷える方向に向かう。長期金利の上昇により企業向け融資や固定型の住宅ローン金利も上昇しやすくなるため、投資や消費の勢いがそがれやすくなり、景気が落ち込んでいく可能性がある。  一方、国債購入の量が減り、長期金利の上昇が円安に一定の歯止めをかけることができれば、エネルギー価格や食料品などの価格上昇が一服することも期待される。  今回の政策を決定した背景や狙いなどは、午後3時半から植田総裁が記者会見して説明する。 

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