記者会見するあいちFGの伊藤社長㊧と新東通信の谷会長

あいちフィナンシャルグループ(FG)は5月31日、8月1日付けで中小企業の広告を手掛ける子会社を設立すると発表した。広告代理店の新東通信(名古屋市)と共同出資する。資本金は1億円で、出資比率はあいちFGが8割、新東通信が2割となる見通し。あいちFGの顧客の中小企業の広告を銀行のATMなどに掲載するほか、代理店業務も手掛ける。

同日、共同出資会社設立に向けた基本合意を結んだ。社名は「あいちFGマーケティング」とする予定。代表取締役はあいちFGから選出し、その他の取締役は両社から出す。本社所在地は名古屋市になる見通しだ。

詳細な事業内容は今後協議する。銀行の店頭のデジタルサイネージ(電子看板)やATMの画面、スマホアプリなどに顧客企業の広告を掲載し、掲載料を得る。新聞やテレビなど自社以外の媒体に広告を掲載する広告代理業や、ホームページやパンフレット、広告コンテンツの作成も手掛ける方針だ。

あいちFGの伊藤行記社長は記者会見で「(銀行の)顧客には広告のニーズがあるが、中小企業にはハードルが高い」と参入の意図を語った。新東通信の谷喜久郎会長は「あいちFGの金融業から総合的な事業会社へという姿勢にいたく共感した。地方の活性化のためにも共同事業は意義深い」と話した。

地銀が広告代理業に参入するのは珍しく、しずおかFGやきらぼしFGなどごく一部に限られる。専門知識やノウハウが必要で、人材確保が課題になる。あいちFGの伊藤社長は「(設立当初は)仕事を取っても新東通信に依頼するケースも多くなる。並行して人材育成や中途採用による人材確保もしていきたい」と話す。

すでに店頭にあるデジタルサイネージへの広告掲載などは早くから始める方針だ。また、2025年1月には愛知銀行と中京銀行の合併であいち銀行が誕生し、関連資料やパンフレットなどの需要が発生する。その一部も新会社で作成する。

21年の銀行法改正で金融機関の一般事業分野への参入規制が緩和され、当局に認められれば広告業にも参入できるようになった。中部では三十三銀行が24年に野村総合研究所と組んで店頭デジタルサイネージを利用した実証実験を実施、本格参入を検討していた。

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