九州のスーパーではお得感を出しながら収益を確保する戦略が業績を左右した

九州・沖縄の主要小売企業5社の2024年2月期の決算が出そろった。イオン九州とサンエーが過去最高益となるなど3社で業績が大きく改善した一方、価格戦略に苦戦した会社もあった。仕入れ価格や人件費の上昇を受けた値上げが定着しつつあるなか、各社ともいかにお得さをアピールしながら利益を確保するかに知恵を絞っている。

イオン九州の24年2月期の連結決算は、純利益が期初の業績予想を63%上回る70億円だった。前期から連結決算に移行しており、前の期と比較できる単体ベースでは売上高に相当する営業収益が前の期比5%増の5089億円、純利益は57%増の73億円と、ともに過去最高を更新した。

一部商品を一定期間値下げする戦略で集客を図る一方、総菜やオーガニック食品など高付加価値の品ぞろえを強化したことが増収に寄与した。あわせて「セルフレジや電子値札の導入店舗を増やすなど生産性を高めた」(柴田祐司社長)ことで売上高販管費率は27.7%と前の期から0.4ポイント低減し高収益につなげた。

沖縄県の小売り大手、サンエーも純利益が41%増の106億円と過去最高だった。新型コロナウイルス禍で落ち込んでいた観光客や地元客の人流が回復するなか、利益率の高いプライベートブランド(PB)商品に加え、高価格帯の商品や沖縄県産品の販売を強化したことで営業収益は7%増の2275億円に伸びた。

一方、ミスターマックス・ホールディングス(HD)の純利益は29%減の24億円にとどまった。電子商取引(EC)事業や店舗改装など投資が重なり販管費が4%増えたほか、仕入れ価格の上昇を背景に粗利益率が1%低下した。平野能章社長は「やみくもに値上げを我慢すると粗利が下がる。当社も昨年そういうきらいがあった」と価格戦略の難しさを語る。

同社の連結営業収益は2%増の1295億円。なかでもPB商品の売上高は15%増と好調だった。PB商品の発注先工場を絞るなどして原価を抑え、割安さをアピールすることには成功したものの、利益には結びつけられなかった。

九州経済産業局によると、九州・沖縄のスーパー既存店での飲食料品販売額は2月速報値で前年同月比8%増えた。商品価格が全体として上昇していることが主因で、節約志向の高まりから消費者1人当たりの購入点数は減っている。

経産局の担当者は「総菜は価格を他店と比較されにくく、PBはナショナルブランド(NB)より安価なことから売れ行きが良い」と話す。消費者の支持を得ながら利益も上げていく値付けと品ぞろえの巧拙が明暗を分けた格好だ。

百貨店業界では博多大丸(福岡市)が4年ぶりに黒字転換を果たした。売上高は12%増の157億円、税引き利益は5億円(前の期は4億円の赤字)を確保した。23年6月の「ザ・リッツ・カールトン福岡」(福岡市中央区)開業も相まってインバウンド(訪日外国人)と富裕層をターゲットに据えた戦略が奏功。高級ブランド品や宝飾品の売り上げが好調だった。

一方、インバウンドの恩恵が福岡市ほど大きくない北九州市が地盤の井筒屋は振るわない。連結売上高は0.2%減の225億円、純利益は5%減の9億円だった。25年2月期の業績は純利益が8億円と3期連続の減益を見込む。

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