カカクコムは求人ボックスなどを成長させていく

カカクコムが成長路線への回帰を進めている。主力のグルメサイトは売上収益が新型コロナウイルスの感染拡大前を上回ったほか、転職市場の活況を受けて求人情報サイトも好調だ。足元で株価は年初来高値を更新するなど上昇基調だが、2021年の高値からは半値の水準にとどまる。中長期の成長期待を高められるかが今後の焦点となる。

カカクコムが9日発表した2025年3月期の連結純利益(国際会計基準)予想は前期比7%増の194億円と、コロナ前の20年3月期を上回って過去最高益を見込む。グルメサイト「食べログ」は飲食店のネット予約サービスが好調で、24年1〜3月の予約人数は2226万人と前年同期から3割以上増えた。同期間としては過去最高を更新し、繁忙期の23年10〜12月(2307万人)に迫った。

また、求人情報サイト「求人ボックス」は3月に月間利用者数が初めて1000万人を超えた。ユーザー1人当たりの売上高も伸びている。25年3月期の売上収益は前期比35%増と、前の期比48%増だった前期に引き続いて高い成長を見込んでいる。

転職市場の活性化が追い風となるなか、サービスの使いやすさも評価されているようだ。UBS証券の風早隆弘シニアアナリストは「求人ボックスは後発として、検索結果の表示方法など、グローバルに展開する他社の求人サイトに対する差別化戦略に注力している」と指摘する。

主力事業の堅調さを受けて株価は上昇基調にある。15日には年初来高値となる1993円をつけた。

ただ、21年10月につけた高値の3915円には届かず、半値ほどにとどまる。上値が重い要因の一つが、食べログと並ぶ主力事業である価格比較サイト「価格.com」の減速だ。掲載されている新製品の減少や円安による家電の価格上昇で、クリック数と販売実績に応じた手数料収入が減少。メーカーからの広告出稿も低調に推移しており、広告収入が落ち込んでいる。

減収傾向は21年3月期から続いてきたが、足元では下げ止まりの兆しも出ている。金融や通信、自動車などの申し込みに応じて収入を得るサービス事業が好調で、手数料収入などを補っている。25年3月期は価格.comの売上収益が前年比以上になる見通しだ。JPモルガン証券の森はるか株式調査部共同部長は「利益成長の足かせとなってきた価格.comの減収幅の緩和は続いている」と指摘する。

業績には上振れ期待もある。食べログは6月にインバウンド(訪日外国人)向けの飲食店予約を始める予定だ。英語・中国語・韓国語に対応し、まず4万店を対象とする。食べログの売上収益は前期比15%以上増える見通しだが、インバウンド予約による収入増は織り込んでいない。野村証券の嚴智用リサーチアナリストは「ネット予約人数の増大と加盟店の獲得が加速しうるだろう」と予想する。

成長のけん引役と期待される求人ボックスは業績への貢献はまだ限定的だ。求人ボックスを食べログなどに匹敵する水準まで育てられるかどうかが、中長期の株価を左右しそうだ。(桜木浩己)

[日経ヴェリタス2024年5月26日号]

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