新会社ではイーアクスル㊨向けのインバーターなどを開発

三菱電機は24日、アイシンと電気自動車(EV)など電動車の部品を製造・販売する共同出資会社を設立することで基本合意したと発表した。自動車業界のEVシフトによる多額の投資負担をにらみ、外部の資金や技術を呼び込む。低迷が続いていた車載事業の立て直しに向け、自前主義から脱却する。

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新会社は1年以内に事業を開始する。三菱電機が66%を出資し、アイシンは34%の株式を保有する。資本金は今後詰める。

24年4月に自動車機器事業を分社して設立した「三菱電機モビリティ」のインバーター(電力変換器)や駆動モーターの事業を新会社に移す。車両用インバーターを製造するチェコ・スラニー市と兵庫県姫路市にある2工場も機能を新会社に移管する。両社は技術者らを新会社に出向させる。

三菱電機モビリティの効率の高いインバーターやアイシンの持つ車両の制御技術を組み合わせ、EV向けの次世代部品を共同開発する。三菱電機は電力制御に使うパワー半導体を新会社に供給する。

自前主義を脱却

三菱電機の自動車機器事業は決算が開示された2021年3月期以降、3期連続で営業赤字に陥った。原材料高に加え、主力製品だったカーナビやオーディオ機器がスマートフォンに代替されていったことも響いた。カーナビやガソリンエンジン用インジェクター(燃料噴射装置)を事業撤退や縮小し、EV部品に注力する方針を示していた。

ただ、EV分野への投資負担が大きくなっている。EVの主力市場の中国では現地のメーカーが台頭し、低価格化が進み、部品のコスト削減も重要になっている。三菱電機は単独での立て直しや成長が難しいと判断した。

外部との連携をしやすくするため、24年4月に自動車機器事業を分社した。当初は分社会社に出資する協業先を探す選択肢もあったが、事業ごとに協業先を探す戦略を採ったという。

三菱電機モビリティの加賀邦彦社長は同日、日本経済新聞の取材に対し「自動車産業は100年の1度の転換点にある。変化が激しく、不確実性も大きい。自前主義では限界がある」と述べた。トヨタ自動車グループのアイシンと組むことで、製品の販路を拡大するといった効果も見込める。

新会社の製品をイーアクスルに活用

一方、アイシンもEV事業を迅速に進めるため、M&A(合併・買収)や他社との協業にも取り組む方針を打ち出していた。3月にSUBARU(スバル)とEV向け駆動装置「イーアクスル」を共同開発・分担生産することを発表した。アイシンの吉田守孝社長は「EV化に対しては、スピードを一切落とすことなく、品ぞろえの拡充と競争力強化に取り組む」と語っていた。

アイシンは19年、デンソーと共同出資会社ブルーイーネクサス(愛知県安城市)を設立し、イーアクスルを開発・販売してきた。アイシン製のギア、デンソー製のインバーターを組み込んでいる。

三菱電機との新会社で開発するインバーターなどをイーアクスルに搭載したい考えだ。新会社の部品が活用できればイーアクスルのラインアップを拡充できるため、自動車メーカーの要望に応じて、様々なサイズや出力、価格帯の製品を供給できるようになるという。

日立は出資比率引き下げ

電機大手では車部品を外部企業などと連携させる動きが広がっている。日立製作所は、21年1月にホンダとともに系列部品メーカーを再編した。日立の完全子会社だった日立オートモーティブシステムズと、ホンダ傘下のケーヒン、ショーワ、日信工業を統合させて日立Astemo(アステモ)を設立した。

ただ、日立はデジタル分野に事業の軸足を移しており、自動車業界の急速なEV化や自動運転技術への投資判断に時間がかかっていた。23年にはホンダ前副社長をアステモ最高経営責任者(CEO)に招いた。「餅は餅屋」(日立幹部)との判断から出資比率を引き下げて連結対象から外し、ホンダが主導する体制に改めた。

パナソニックホールディングスも23年11月に自動車部品の「パナソニックオートモーティブシステムズ」を米ファンドに売却することで合意した。同事業の24年3月期の営業利益率は2.9%にとどまっており、パナソニックHDとして相対的に低収益の事業をファンド傘下で立て直す判断を下した。

三菱電機とアイシンの新会社も電機と車部品といった業界の垣根を越えた組み合わせになる。投資やリスクの考え方などの擦り合わせが必要となるが、加賀社長は「社風や文化が異なるからこそ価値がある」と述べる。異業種による化学反応を生み出せるかが新会社の成功の鍵を握る。

(大西綾、清水涼平)

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