Jフロントの24年2月期連結決算は高額品需要が追い風となり純利益が前の期比2倍となった。(大阪市の大丸心斎橋店)

J・フロントリテイリングが15日発表した2024年2月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前の期比2.1倍の299億円となった。インバウンド(訪日外国人)や国内の顧客の高額消費がけん引した。輸入雑貨店「PLAZA(プラザ)」運営会社の株式売却益や固定資産売却益も計上した。

売上高にあたる売上収益は13%増の4070億円、本業のもうけを示す事業利益は78%増の443億円だった。事業別では、大丸松坂屋百貨店の百貨店事業の事業利益が2倍の262億円だった。訪日客や国内の外商客、若年の富裕層に高級ブランド品や宝飾品といった高額品が売れた。売り上げに連動する手数料や賃上げによる人件費の販管費は増えたが、売上高の増加で吸収した。

免税売上高、過去最高

子会社の博多大丸を含む百貨店の免税売上高は721億円と過去最高となった。新型コロナウイルス禍前の20年2月期を約1割上回った。中国客は約半数にとどまる一方、台湾や香港、欧米客の割合が上昇した。

商業ビル「パルコ」のショッピングセンター(SC)事業の事業利益は43%増の83億円。主要店の既存店取扱高は22%伸び、日本アニメの売り場をもつ渋谷店(東京・渋谷)や心斎橋店(大阪市)で訪日客の購買が好調だった。

24年2月期の年間配当は36円(前期実績31円)と従来予想を3円引き上げた。

25年2月期の業績予想は、事業利益が前期比横ばいの445億円、純利益は21%減の235億円を見込む。百貨店の事業利益は7%増と堅調に推移するが、システム投資や前期に計上した売却益の反動で減益となる。免税売上高は970億円と2年連続で過去最高を計画する。

年間配当は40円と前期実績から4円増やす計画だ。今期から配当性向を40%以上と従来の30%から引き上げる。

5月から7月に最大100億円の自社株買いも実施する。上限800万株で発行済み株式(自己株式を除く)の3.03%にあたる。株主還元を進める。

新中計、新規事業に500億円投資

25年2月期から3年を対象にした新中期経営計画も発表した。27年2月期の事業利益は前期比17%増の520億円の計画。百貨店で6割を稼ぐつもりだ。営業キャッシュフロー2200億円などを原資に3年で1750億円の投資を予定する。

商業施設開発のデベロッパー事業に590億円を充てる。eスポーツなどのデジタル関連事業や地方の食品企業向けファンドなど小売業に親和性がある新規事業への成長投資に500億円を活用する。

最年少社長の小野氏、百貨店の追い風は『暴風』

48歳と大手百貨店で最年少の社長となった小野圭一社長は3月の就任後、初めての決算説明会に臨んだ。好調な高額消費について「国内の若年富裕層で活発な購買行動がみられた。訪日客の単価は上がっている一方、(コロナ禍前には)客数は届いておらず伸びしろが今後もある」と説明した。

社長就任後初めての決算説明会に臨むJフロントの小野圭一社長(15日、東京都中央区)

業界の先行きについては「百貨店に追い風が吹いているが、ある種の『暴風』だ」と強調。「外部環境に業績が左右されすぎており、危機感がある。将来に向けた成長の種をまけるかで大差がつくため、商品の海外輸出など新たな事業を育てていきたい」と語った。

(斎藤萌)

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