新潟県の東京電力柏崎刈羽原子力発電所の6号機(左)と7号機

東京電力ホールディングス(HD)は15日、柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)7号機の原子炉へ核燃料を運び込む作業を始めると発表した。5月にも原子炉は約7年ぶりに再稼働できる状態へ戻る。4月には東電株が東日本大震災後の最高値を更新するなど期待は先立つが、稼働の条件になる地元同意を得られる見通しは立っていない。

原子力規制委員会が東電が提出していた作業計画などを15日認め、東電は同日夕方から作業を始める。同社は「一つひとつの工程を着実に進めていく」とのコメントを発表した。

5月下旬にも原子炉を稼働できる状態へ戻す。最初に炉と隣り合う燃料プールで保管している核燃料872体を運び入れる。過去の実績では2週間ほどで完了した。作業は全て水中で行い、核分裂反応がおきないよう制御する装置を入れて進める。

柏崎刈羽原子力発電所7号機(新潟県)の内部(23年11月時点)

燃料の搬入後は原子炉の上蓋を閉め、安全機能に問題がないかも確かめる。原子炉をすぐ止め、燃料を冷やしながら密閉する装置の動作などを確認する。作業時は平時の約6倍の51人体制で監視を続ける。早ければ1カ月半で全ての作業が終わる見通しだ。

東電は柏崎刈羽が1基再稼働すると年1100億円の収支改善につながると試算する。同社の再建計画では25年度までに6号機も動かせれば、20年代に経常利益で3000億円程度を安定して稼げるようになるとする。

株式市場では早くも再稼働へ期待が集まる。同社株は4日の終値が1012円と11年の大震災後で初めて1000円台を回復。15日も一時1114円となり10年来高値を更新した。年初からの株価の上昇率(12日時点)は42%と、電力10社では北海道電力(同80%)と九州電力(同53%)に次ぐ水準だ。

みずほ証券の新家法昌シニアアナリストは「福島第1原発事故の関連債務が重く、仮に再稼働しても今の株価は割高だ」と指摘する。機関投資家が東電株を敬遠するなか、個人投資家の思惑買いが株価をつり上げている。

もっとも、東電は新潟県から再稼働の同意を得ていない。通常の原発は作業完了から1カ月ほどで再稼働してきたが、東電は今だ稼働の見通しも示せていない。

国内で再稼働した原発12基は全て地元同意を得て、稼働の見通しが立ってから作業に入っていた。柏崎刈羽の状況は極めて異例だ。

今後は同意を判断する新潟県の動向が焦点になる。花角英世知事は「県民がどう受け止めるのか丁寧に見極めていく」とする。判断時期や手法は示していない。

3月には資源エネルギー庁の村瀬佳史長官が花角知事と面会し、再稼働へ協力を要請した。国が前面に立って調整を本格化させる。新潟県は原子力災害に備え、避難の指針や広域での避難路の整備を求めており、国が具体的な回答を示せるかが焦点になる。

東電も新潟県の信頼を得ないといけない。23年まで不祥事が続き、小早川智明社長は同年1月を最後に花角知事と面会できていない。東電は専門家に原発の運営へ加わってもらうなど安全対策を強化しつつ、地元説明を重ね、再稼働へ理解を求めていく。

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