日銀は、国債などの資産の大量購入やマイナス金利政策など、過去25年間の非伝統的な金融政策を分析する多角的レビューを進めていて、今回のアンケート調査は、企業およそ2500社に、この間の政策が経営にどのような影響を与えたかを複数回答で尋ねました。
それによりますと、およそ9割の企業が政策の効果を実感していました。特に、全体の7割以上が、金融機関からの借入金利の低下が効果があったという回答で、経営や前向きな投資の支えとなったという受け止めでした。
一方、副作用があったという指摘も、全体の7割以上に上りました。具体的には、円安による原材料コストの上昇や、新陳代謝の停滞で人材確保が難しくなり、低価格競争も激化したことなどが挙げられました。
日銀は21日に多角的レビューの一環として、外部の有識者を招いた2回目の討論会を開く予定で、アンケートの結果も踏まえて議論を行うことにしています。
日銀は、ことし3月に、マイナス金利など大規模な金融緩和策を解除して、短期金利の操作を主な手段とすることを決め、伝統的な政策に戻す方向性を打ち出しましたが、過去の政策をどう総括し、今後に反映させていくかが注目されます。
「多角的レビュー」分析結果を随時公表
日銀は、去年4月に植田総裁が就任したあと、1990年代後半からの25年間の金融政策を分析する「多角的レビュー」を行っています。
この25年間は、短期金利を操作するいわゆる「伝統的」な政策から、国債やETFの買い入れやマイナス金利政策といった「非伝統的」と呼ばれる政策に軸足を移した期間で、レビューでは、その効果や副作用をさまざまな角度から分析しています。
日銀は、分析結果を随時、公表していて、去年12月には、非伝統的政策は企業活動を活発化させることで生産の押し上げに大きく寄与し、潜在成長率を下支えした可能性が示唆されるとしました。
さらに、雇用環境の改善や経済・物価に対する一定の寄与があったとする一方、消費者物価を押し上げる効果は1%程度にとどまっていると分析しています。
また、同じ時期に出された非伝統的政策が債券市場に与えた影響についての分析では、2013年に黒田前総裁のもとで始まった異次元緩和や2016年に導入したマイナス金利政策によって取り引きの円滑さを示す「機能度」が低下したと指摘しています。
このレビューの結果は、ことし秋ごろまでにまとめられる見通しで、これについて、日銀の政策委員からは「将来の政策にいかしていくことも重要だ」という意見が出ています。
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